【事例】EVにブロックチェーンはどう使える?CO2削減やバッテリーリユース・リサイクルに

【事例】EVにブロックチェーンはどう使える?CO2削減やバッテリーリユース・リサイクルに

はじめに

EV(電気自動車)やPHV(プラグイン・ハイブリット車)、HV(ハイブリット車)などの電動車は、今後急速に普及すると見込まれています。BCG(Boston Consulting Group)の調査によると、世界の自動車販売台数に占める電動車のシェアは、2025年には約30%、2030年には51%になると推計されています。

日本でも2025年までに40%を超え、2030年には55%となる見込みです。将来的には、ガソリン車やディーゼル車よりも電動車の方が一般的となるでしょう。

EVをはじめとした電動車に関して、ブロックチェーンとの相性が良いと考えられるテーマが2つあります。

  • CO2排出量削減
  • EVバッテリーのリユース・リサイクル活性化

本記事では、これら2つのテーマについて背景や課題の整理、考えられる対応策とブロックチェーンの活用方法についてまとめました。

テーマ1「CO2排出量削減」

CO2排出量削減が求められる背景とは?

2015年に締結された「パリ協定」で、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑える目標が決定されたのを受け、国際的にCO2排出量削減が求められています。日本の目標は2050年までに、2013年比でCO2排出量80%削減と決定されました。

CO2排出量の削減が求められる自動車業界

CO2が排出される要因は多々ありますが、中でも自動車業界は日本のCO2排出量の1/6を占めています。したがって、自動車業界ではCO2排出量削減に向けた取り組みの重要性が高いのです。

世界に目を向けると、欧州を中心に自動車のCO2排出量規制が進んでおり、自動車業界は対応を迫られています。EUの「CAFE規制」では、域内で乗用車を販売するメーカーは、2021年に平均CO2排出量を95g/km(2015年の目標値に比べて約3割減 )にするよう求められています。欧州23カ国の2019年段階の平均値が121.8g/kmで3年連続上昇していることを考えると、CAFE規制は非常に厳しく、自動車業界にとって喫緊の課題となっています。

CO2排出量の規制対応はEV(電気自動車)の普及がカギ

CO2の排出量規制に対応するには、EVの普及がカギとなります。バッテリーEVであれば、走行時のCO2排出量はゼロとみなされるからです。

ただしEVについては、バッテリーの製造時や発電時のCO2排出量が多い点に留意が必要です。たとえばEVのエネルギー源となる電気が火力発電の場合、化石燃料を燃やす際にCO2が発生します。

そのためライフサイクル全体でCO2排出量を評価する「LCA(Life Cycle Assessment)」という観点からは、走行距離0kmの時点ではガソリン車よりもCO2排出量が多くなります。走行距離が増えるにつれて緩やかにCO2排出量が増えていき、走行距離が一定値を超えて初めて、ガソリン車よりもEVのCO2排出量が少なくなるのです(以下のグラフ参照)。

https://www.goldmansachs.com/japan/insights/pages/electric-vehicles-lfa-f/lca-report.pdf

ライフサイクル全体でCO2排出量を評価するLCA規制を導入するかどうかは欧州で議論されている最中であり、2023年までに結論が出される予定です。導入された場合、EVメーカーはLCA規制に対応する必要があります。

CO2排出量削減における課題と対応策

前のセクションでは自動車業界において、CO2排出量の削減が重視される背景を確認しました。実際にCO2排出量の削減を推進するにあたっては、2つのボトルネックがあると考えられます。

  1. CO2排出量をライフサイクル全体のどこで、どの程度削減すべきかわからない。またどの程度の削減効果があったかが見えない。
  2. CO2排出量削減に対するインセンティブがない

1点目については、CO2排出量を削減するにあたって、まず現状の把握が必要です。ライフサイクルのどのプロセスを重点的に、どの程度削減すべきかが現状では把握できていないので、効率的な打ち手が考えられません。また、削減効果を実績として可視化できない状態では、削減に対して前向きに取り組むことは難しいでしょう。したがって、CO2削減量を可視化する対応策が求められます。

2点目については、ユーザーやサプライヤー、リサイクル業者などがCO2排出量の削減に協力するインセンティブがない点がボトルネックとなっています。自動車メーカーはCO2排出量規制への対応が必要であるから対応しているものの、他の主体にはそもそもインセンティブがありません。この課題に対してはインセンティブを新しく設計するアプローチが有効です。

そして上記の対応策を実施するには、ブロックチェーンが効果的だと考えられます。以下、その適用方法を解説します。

※これらの課題はEVにかぎりませんが、CO2排出量削減の問題に関しては将来的にEVが主軸となっていくと考えられるので、以後EVに絞って話を進めていきます。

ブロックチェーン適用方法

目指す姿は、CO2排出量可視化・クレジット取引プラットフォームです。これをブロックチェーンにより実現します。

このプラットフォームでは、バッテリーサプライヤー、メーカー、ユーザー、電力事業者、リユース事業者などEVに関わるあらゆるステークホルダーのCO2排出量を定量化し、ブロックチェーンに記録していきます。これにより、EVのライフサイクルにおけるどのプロセスで、どれだけのCO2排出量があるのかが可視化されます。そしてライフサイクルにおいて重点的にCO2排出量を削減すべきポイントがわかり、削減効果を実績として正確に把握することが可能となります。

ブロックチェーンを基盤として利用するメリットは、真正性を担保できることと、各ステークホルダーのデータを同じ形式でスムーズに共有できることです。

また、インセンティブ設計については、可視化されたCO2排出量をカーボンクレジットとして取引できるブロックチェーンプラットフォームの構築が有効だと考えられます。カーボンクレジットの取引をブロックチェーン基盤で行う試みは、自動車業界に限らず見られ、日本ではブロックチェーンを活用したJ−クレジット取引市場「イツモ(ezzmo)」というプロジェクトが環境省主導で進められています。

削減したCO2排出量をクレジットとして他社に販売できるインセンティブがあれば、ユーザーも含めた業界全体としてCO2排出量削減に向けた動きが加速すると思われます。

テーマ2「バッテリーのリユース・リサイクル活性化」

バッテリーのリユース・リサイクル活性化が求められる背景

先述した通り、電動車は今後急速に普及すると見込まれています。EVの普及に際して、バッテリーの資源が枯渇したり供給が不安定になったりする恐れがあることが問題となっています。

米国地質調査所(USGS)の報告によると、バッテリーの原料として不可欠な金属のコバルトは、 世界の埋蔵量が710万トンあるようです。 2019年にEVのバッテリーに使われたコバルトは1.9万トン、自動車以外の産業で年10万トンほど利用されます。今後EVの生産量がますます増加していったとき、コバルトは何十年と経たないうちに枯渇してしまいます。

さらにコバルトは、世界の生産量の半分以上がコンゴ民主共和国によるものです。コンゴではコバルト採掘のために子どもが長時間・低賃金で働かされ、さらに紛争が発生する地域でもあるため、コバルトの供給が不安定になる恐れがあります。

また別の観点では、自動車業界としては環境負荷を軽減するために(CO2排出量の規制に対応するために)EVを普及させたいという意図があります。現状、EV普及の最大のボトルネックは価格であるため、価格を下げる手段が求められているでしょう。

資源が枯渇する問題への解決策、また価格を下げるための一つの手段としては、バッテリーのリユース・リサイクルが有効です。現状、 バッテリーのリユース・リサイクル率は低いため、これを活性化することが自動車業界には求められています。

バッテリーのリユース・リサイクル活性化における課題と対応策

現状のリユース・リサイクル率が低い原因としては、以下の2点が考えられます。

  1. 回収業者にはどの場所にどれだけの残存価値を持つバッテリーがあるかわからないので、 効率的に回収することができない
  2. 回収しても残存価値が不透明なので、適正価格で取引されない。

1点目について補足します。バッテリーは、残存価値の多寡によってどのようにリユース・リサイクルされるかが異なります。残存価値が高ければ改修してEVへの再搭載が可能です。その他にも残存価値が同程度のバッテリーモジュールを組み合わせて、蓄電池としてリユースすることもできます。残存価値によって後工程が変わってくるので、あらかじめどのバッテリーにどれだけの残存価値があるかを把握しておく仕組みを構築することで、効率的な回収が見込めます。

2点目の背景としてあるのが、残存価値の把握の難しさです。既存の技術では、バッテリー1個の残存価値を測定するのに3時間かかると言われています。回収前に残存価値を予測できたら、測定作業を簡素化することができるでしょう。

これらの対応策を実現するのにもブロックチェーンが効果的だと考えられます。 以下、その適用方法を解説します。

ブロックチェーンの適用方法

目指す姿は、ブロックチェーンを活用したバッテリー取引プラットフォームです。

このプラットフォームでは、車両の走行データからバッテリーの残存価値を予測するロジックを構築し、車両の充電時などにIDと残存価値をブロックチェーンに記録します。やがて廃車となった後、回収業者はプラットフォームに問い合わせることで、どこにどれだけの残存価値を持つバッテリーがあるかを把握できます。したがって、優先順位をつけながら効率的に回収することが可能になります。

またこのプラットフォームでは回収前から残存価値を予測できるので、残存価値の不透明さは解消され、長時間の測定作業は簡素化されます。残存価値が見える化されたおかげで、バッテリー取引価格も是正されるでしょう。

ブロックチェーンを基盤として使うメリットは、残存価値の真正性の担保できることと、回収業者やリユース業者など組織をまたぐ際のデータ共有が効率化されることです。

結果として、リユース・リサイクルが活性化するため、資源の問題に対応し、新車EV価格の低下が見込めます。

まとめ

今後ますます普及していくと見込まれる電動車に関して、

  • CO2排出量削減
  • EVバッテリーのリユース・リサイクル活性化

という2つのテーマを取り上げました。ブロックチェーンは、データの真正性を担保できる点、そして組織をまたいだデータ共有を効率化できる点において、これらのテーマに効果的かもしれません。

EVへのブロックチェーン適用については、今回ご紹介したテーマだけでなく送電網との統合に関するテーマもあります。2020年10月6日には、モビリティ産業における巨大コンソーシアム「MOBI」から、ブロックチェーンベースのEVGI(Electric Vehicle Grid Integration)標準規格が発表されました。EV×ブロックチェーンは今後も注目される分野です。

参考資料:
世界の電動車(xEV)シェアは2030年に51%へ。日本では2030年に55%、ハイブリッド車が引き続きシェアを維持~BCG調査
CO2規制の新局面:EVは「走り方」だけでなく 「作り方」も問われる時代に
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2020年上半期 欧州二酸化炭素排出量レポート
電気自動車の電池にも使われる「コバルト」は石油より早く枯渇する?

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