大規模化・複雑化するSCMの課題解決に向けたブロックチェーンの活用
当初、ブロックチェーンは金融領域で脚光を浴びていましたが、サプライ・チェーン・マネジメント (SCM)の領域に関しても、高度なトレーサビリティや組織を超えたデータ共有といったメリットから、現在大きな注目を集めています。
現状のサプライ・チェーン・マネジメントの課題
現在のサプライチェーンは世界中の企業や組織によって構成されており、各企業は、透明性や信頼性の確保、組織を超えたアセット管理など、新たな課題に直面しています。
実際、2017年実施の64カ国408組織を対象としたサプライチェーンの調査では、多くの企業がサプライチェーンの透明性やデータの取扱いに課題を抱えていることが示唆されています。
参照:
How blockchain will transform the modern supply chain
現状の課題をより具体的に見ていくと、
- 消費者は、生産地情報などのごく一部の情報しか得ることができない
- 情報が各組織で個別に管理されているため、改ざんの可能性がある
- 製品に問題が発生した際、問題発生源の特定や拡散防止に多大なコストと時間がかかる
- 配送や製品管理に関する事前の条件が遵守されているか検証が困難である
といった課題を抱えています。
ブロックチェーンを活用した課題の解決
ブロックチェーンを活用することで、セキュアかつ透明性のある形で、組織間におけるプロセスの共有 (例えば、複数の組織での製品の出所情報や移動中のステータス状況の共有)が可能になります。
また、スマートコントラクトを活用することで、事前に設定された条件通りに配送が行われているかの検証がより緻密かつ容易に行うことが可能になります。
前述の課題については、
- 消費者は、生産地情報だけでなく、中間地点における配送状況といった、網羅性の高い履歴情報を閲覧可能になる
- ハッシュの仕組みや分散的な情報共有により、データの改ざんが極めて困難になる
- 情報が一元的に管理されているため、問題発生時の情報のトレースや発生源の特定が短時間で可能になる
- 事前に取り決められた (配送や管理等に関する)条件を遵守しているかどうかの検証が、より厳密かつ容易に実施可能になる
といった改善が期待されます。
以上のように、ブロックチェーンの活用は、高度化するサプライチェーンの課題を解決する新たなソリューションになると期待されています。
具体的な事例の紹介
ソリューションとして実装する際のポイント
具体的なソリューションとしてブロックチェーンを実業務へ活用するには、既存のサプライ・チェーン・マネジメントのデータ管理方法をブロックチェーンに変えるだけでなく、
- どのタイミングでどういった情報を記録するか
- 製品の物理的なトレースをどうするか
といったことも合わせて検討する必要があります。
例えば、ブロックチェーンによるデータ管理にQRコードを組み合わせることで、製品の物理的なトレースや、消費者がスマートフォンでQRコードを読み込むだけで履歴情報を得られるような、透明性の高い製品の流通が可能になります。
実適用の際には上記に加えて、
- ブロックチェーンへの参加組織や共有範囲をどうするか
- 合意形成アルゴリズムはどうするか
といったことも合わせて検討する必要があります。
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ブロックチェーン適用事例SCM・ソリューションとして実装する際のポイント
Azure Blockchain Workbenchを用いたSCM用デモアプリケーションの実装
Azureには、ブロックチェーンアプリケーション開発用にパッケージングされたAzure Blockchain Workbenchといったものが備わっています。
Azure Blockchain Workbenchを用いることで、ブロックチェーンアプリケーション開発を迅速に行うことができます。
今回、Azure Blockchain Workbenchによるサプライ・チェーン・マネジメント用のデモアプリケーションの実装の説明を通して、ブロックチェーンアプリケーションを手軽に開発できることを紹介します。
・完成したデモアプリ
デモでは、サプライヤーから配送業者を介して発注元へ製品が配送される際に、事前の条件通りに正しく製品が配送されているかを、ブロックチェーンとスマートコントラクトを用いて検証しています。
▼デモアプリケーションの実装方法はこちら
適用事例SCM・Azure Blockchain Workbenchによるデモアプリケーション徹底解説!