分散型クラウドファンディングDAOLaunchが目指すWeb3時代のスタートアップ支援|DAOLaunch CEO 今山朔郎|インタビュー

分散型クラウドファンディングDAOLaunchが目指すWeb3時代のスタートアップ支援|DAOLaunch CEO 今山朔郎|インタビュー
dao-launch interview eyecatch

はじめに

ブロックチェーンメディア「BaaS info!!」(バース・インフォ)では、ブロックチェーン業界で活躍する方々へのインタビュー記事を不定期で掲載しています。

※過去のインタビューはこちら

今回のゲストは分散型クラウドファンディング「DAOLaunch」プラットフォームを立ち上げたDAOLaunchのCo-Founder CEO今山朔郎さんです。スタートアップを支援する事業をグローバルに展開する今山さんは、常にブロックチェーン領域の最先端事業に携わろうと世界中を旅してきました。

現在はドバイに移住し、さらに大きなプロジェクトを計画中というDAOLaunchが、分散型クラウドファンディングでどのような世界を目指すのか、将来のビジョンについて伺いました。

プロフィール
今山朔郎さん
DAOLaunchのCo-Founder & CEO
2015年にクリプトに出会い、そこからさまざまなクリプトスタートアップに出会ってきた。
2021年より、分散型クラウドファンディングDAOlaunchを創業、同年12月にGate.ioに上場。イギリス、アメリカ、ドバイ、ベトナム、インドなど各地にパートナーやメンバーを抱えて、新しいスタートアップへのソーシング、サポートをしている。

DAOLaunchはスタートアップ投資に興味を持ったことから始まったグローバルプラットフォーム

──本日はDAOLaunchの立ち上げについてお話を伺いたいのですが、その経緯として最初に今山さんがブロックチェーン業界に携わるようになったきっかけから教えてください。

最初にビットコインと出会ったのは、2015〜2016年頃です。ビットコインについて調べて、元々トレードが好きだったこともあり、当時は自分でトレードbotやトレードツール、アービトラージ(裁定取引)ツールなどを作っていました。

継続して暗号資産に関連するビジネスに携わりながら、昨年(2021年)ぐらいから自分たちでもプロジェクトを立ち上げようと、DAOLaunchを起業し、クリプト(※編注:正確な定義は定まっていないが、暗号資産自体や関連する事業領域の指す)自体が盛り上がっているという話を聞いて、今はドバイにて新たに事業を立ち上げています。

クリプトが盛り上がっている場所には実際に行ってみたいという気持ちが前々から強く、2017年頃にはマルタ共和国が盛り上がっていると聞いてマルタに行ってみるなど、昔からバックパッカーのような性格あって、自由に海外に出向いては何かその時々の仕事をしてきました。

──当初は投資に対する興味が強かったということでしょうか。

クリプトと投資は切り離せないものだと思いますね。暗号資産は投資としても魅力的だし、技術としても面白いじゃないですか。

ビットコインは金銭的インセンティブもあり、また仕組みを調べていくと技術的なことも面白いですよね。自分の興味は技術と金銭的インセンティブどちらが先だったかは忘れましたが、基本的には両方に魅力を感じてこの世界にのめり込んでいきましたね。

──今ドバイに住んでいらして、以前からバックパッカーとして海外を飛び回ってらっしゃるということですが、元々日本でお仕事はされていたことはありますか?

僕は今32歳ですけど日本を出たのは10年前ぐらいですね。元々はアウトドアガイドのような仕事をしていました。海外ではアウトドアスポーツが盛んで、英語も得意だったので、海外に出向く土台は昔からあったのかなと自分でも思いますね。

──その当時は、ブロックチェーンに関しては技術的な要素が強く、理解するには知識としてエンジニアのような素養がないと難しくなかったですか。どのようにブロックチェーンに関する知識を深めていったのでしょうか。

元々、大学がエンジニア専攻でした。それに数学も好きですから、ある程度は理解できる土台があったと思います。でも、だからといってエンジニアとして働くつもりはなく、もう少しいろいろな世界を見たいということで、バックパッカーのように海外に出向くようになりました。

それからしばらくしてビットコインに出会い、サトシ・ナカモトの論文や解説書などを読んで、これは面白いなと思うようになり、自分も何か始めてみようと思ったのが暗号資産に携わるようになったきっかけです。

──行動力が素晴らしいですね。ブロックチェーンに関していえば、DAppsであったり、ブロックチェーンゲームであったり、いろんな選択肢があるなかで、いまの分散型クラウドファンディング「DAOLaunch」の事業をスタートさせた経緯について、事業内容も含めて具体的に教えていただけないでしょうか。

僕自身がブロックチェーン業界に長く携わるなかで、昨年ぐらいからローンチパッドという資金調達プラットフォームのブームが来ていたことに注目していました。「Polkastarter」を始め「Duck DAO」などの資金調達プラットフォームを見ていて、もう少し改善すればポテンシャルを発揮できるのではないかと思ったというのが一つのきっかけですね。

過去に「Compound」や「Uniswap」のようなDEX(Decentralized Exchange)が出てきたときも最初から見てきましたが、自分は基本的にスタートアップ投資が好きなので、海外のプロジェクトとのコネクションを築き上げていきながら、スタートアップ投資の土台を構築したいという思いがありました。

DAOLaunchの事業内容としては、僕らのプラットフォームはすでに一部の機能は公開されていますが、基本的にはWebアプリ上で自身のウォレットを繋いでいただき、そのウォレットから直接、ポテンシャルの高いスタートアップに対して、トークンもしくはNFTで出資ができるプラットフォームになっています。

Webアプリからは「イーサリアム」や「BNB Chain(BSC)」、「Polygon」などいろいろなブロックチェーンネットワークに接続でき、出資したいスタートアップを見つけたら、「MetaMask」や「WalletConnect」など自分のウォレットから直接出資ができます。もちろんトークンの受け取りも可能です。

──すごく興味深いのが、このプラットフォーム自体が日本のブロックチェーン企業が勝負しているところとは違う領域で勝負されている印象を受けますね。DAOLaunchはいわゆるIDO(Initial DEX Offering)領域だと思うのですが、ここに辿り着いた今山さんの視点やIDO領域で勝負したいと思ったモチベーションはどのようなところにあるのでしょうか。

やはりスタートアップに投資して、いろいろなプロジェクトに関わりたいというのが根底にあります。クリプトは金融市場のビジネスを自由化し、誰でも金融ビジネスを立ち上げることができるという点が、一番大きな革命だと僕は思っているんですね。

クリプトの世界ではスタートアップ投資が従来よりも効率化されて、またプラットフォームも乱立している状況ですから、そこで勝負したいというのがありました。それにスタートアップが立ち上げるプロジェクトのホワイトペーパーひとつひとつを見るのも面白いので、やはりこの領域で何かやってみたいというのが強くあります。

先行するIDOプラットフォームに感じていた課題

──スタートアップを支援していきたいということから自分たちでプラットフォームを作るプロジェクトを始めたのは、先行するIDOプラットフォームに何か課題を感じていたということでしょうか。

そうですね、結構課題を感じています。あくまでもイメージですが、IDOというのは資金調達プラットフォームというよりも、IPO(新規上場株)のように基本的にはトークンを上場して、トークン保有者や購入者が利益を確定する場のような意味合いで使われることが多いです。IDOで投資家の人たちが利確するというような印象ですね。

IDOによってトークンによる上場のハードルは低くなりましたが、プロジェクトがビジネスを成り立たせるためには、どうしても年月が必要だと思います。そこは絶対に変わらないものだと思うんですね。

トークンで誰もが上場できるからといって安易に上場させても、トークン自体に流動性がなければ意味がありませんし、流動性ができたところでプロジェクトは手数料を下げなければなりません。

僕は、基本的に上場というのはイグジット(※編注:投資した資金の回収)のために使うものだと思っています。実際の市場を見ていると、パブリックセールで時間もかけず需要も高まっていない状況でトークンを上場して、仮に市場から資金を集められたとしても、すぐに利確で投資家にトークンが売られてしまうため、その売り圧に耐えられずトークンの価格も下落してしまい、結果プロジェクトも悪影響を受けるという繰り返しです。

こうした状況に対して、もう少しできることがあるのではないかと僕らは思います。ほかのローンチパッドのようにすぐにトークンを上場させるのは、プロジェクトにとっては厳しい面もあり、そのエコシステムが本当にスタートアップを支援しているとはいえません。

そこでどのようなアプローチができるのかを考えた結果、DAOLaunchももちろんパブリックセールは行っていますが、トークンのプライベートセールやシードセールに着目したプラットフォームでありながら、NFTにも注目しました。

NFT分野は(2021年前後の)ブームが到来してからすぐに技術的な進歩も見られ、ブームの当初はNFTアートの所有権を売るというような使い方でしたが、昨今のNFTにはいろいろな用途が出てきました。

たとえば、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」というNFTコレクションのプロジェクトは、コミュニティベースのNFTを発行しました。BAYCのビジネスモデルは、NFTを発行することで資金調達を行い、そのNFTを保有している人たちに報酬としてさらなるNFTやトークンを配布し、そのトークンを上場させてメタバースやGameFiなどの新しいプロジェクトを展開していきます。

NFTは、トークンと比べて一般的に追加で流動性を提供する必要性がありません。また、トークンホルダー1人1人に対して特別なNFTを配布することもできます。それによって資金調達用に最初に発行されたNFTは売られずに比較的、長期間保有してもらえるという状況になりました。

トークンがエクイティ(株主資本)などの投資手法と最も異なるのは、トークンは基本的にはイグジットしてキャピタルゲインを得るものでありながらも、ユーティリティ(機能・利便性)がある点だと思います。

そのトークンユーティリティの効果を得るためには、マーケットに対してエクスポージャーしたり、コミュニティの支持を得たりする必要がありますが、プロジェクトはそういう形でどんどんNFTを発行して支持を得るべきだと僕は思っています。

NFTは基本的にイグジットの手法としては(利確として換金できないなど)使い勝手が悪いので、トークンユーティリティとしてNFTを活用したほうがエコシステムの持続性に優れているということをBored Ape Yacht Club(BAYC)が示してくれました。そういった意味でプロジェクトがNFTを利用するのは、将来的にも非常に効果的だと思っています。

DAOLaunchはプロジェクトに対して、もちろんトークン発行の支援もしていきながら、NFTに関するさまざまな機能を付随させて、いろいろなNFTのツールを提供できるようにして、プロジェクトがNFTをうまく組み込んだエコシステムを作ることができるように他のIDOプラットフォームとは差別化を図りながら、スタートアップを支援することができるようにしています。

話が前後してしまいましたが、DAOLaunchはスタートアップとそれを支援する投資家をブロックチェーン上で直接つなぎ、国境を越えて誰もが自由に新たなエコシステムをシームレスに創出し、支援することを可能にしたプラットフォームです。

現在のスタートアップがエコシステムを創出するための仕組みの多くは中間組織が介在し、投資家よりもこれら中間組織が最も利益を得ているという環境が常態化しています。DAOLaunchでは投資家とスタートアップを、ブロックチェーンを活用して直接繋ぐことで中間組織を排除することもできます。

スタートアップ支援のカギはNFTの活用にある

──スタートアップにしてみたら、御社のプラットフォームを選択することでプロジェクトにNFTを組み込んだエコシステムが構築することができるという意味ですか?

そうですね、エコシステム構築の際にNFTを使ったいろいろなアプローチができるように、新たな機能を提供しているということです。

NFTの価値はいろいろとパターンがもちろんあります。たとえばこれまでに流行した「Axie Infinity」や「STEPN」のようなGameFiプロジェクトは、基本的にNFTを保有しながら何か行動することで、NFTとは別のトークンが稼げるようなビジネスモデルです。

また、先ほどいった「Bored Ape Yacht Club」に代表されるNFTプロジェクトであれば、NFTホルダーに対してさまざまなインセンティブを付与していく、たとえば経済的インセンティブや、NFTホルダー人だけが参加できるカンファレンスやイベント、コミュニティ、オフラインミーティングなど、様々なユーティリティを提供していくビジネスモデルも出てきました。

──たとえばGameFiローンチパッドしかり、その他のローンチパッドでも、プロジェクトはそのエコシステムの中身自体を考えなければなりませんよね。それをうまく構築するには技術力も必要になると思いますが、御社のプラットフォームを使うとそれが容易であるというようなイメージですか?

DAOLaunchが提供しているツールを具体的に説明すると、DAOLaunch上で独自トークンの発行、資金調達、上場、トークンホルダーへのインセンティブを設計・管理できる機能を提供しています。さらに、他のプロジェクトでは見られないような「NFTファーム」機能も開発しています。

NFTファーム機能は、プロジェクト側が自社でネイティブトークンを発行し、ステーキングの対価として、どのNFTを配布するかを選択できるプラットフォームです。

一般的なプロジェクトでは、トークンホルダーにトークンをホールドし続けてもらうために、代わりのトークンを報酬として配布するケースが多いのですが、配布すると売り圧につながります。そこで、そうした売り圧を避けるために、DAOLaunchのNFTファーム機能ではステーキングのリワードとして、NFTを配布するように設定できるようにしました。

また、DAOLaunch ではNFT自体の発行が可能で、そのNFTを任意のトークンのステーキング報酬として設定することもできます。ステーキングするトークンは、自社発行するメイントークンでもLPトークン(流動性提供トークン)でもかまいません。

──投資家側から見ると、価値を感じたプロジェクトに対して投資できるだけでなく、ステーキングにも参加できるということですか?

そうですね。ポテンシャルがあると投資家が思ったらその場でトークンへの出資ができます。プロジェクトのトークンを購入したら、そのトークンを使ってステーキングが可能です。ステーキングをすることで、プロジェクトが設定したNFT等のリワードを予約し受け取ることができます。プロジェクト側からするとそういった形で、コミュニティにエクスポージャーできるわけですね。

世の中には、有望なプロジェクトに投資したいベンチャーキャピタルや投資家は多くいますから、資金調達の仕組みはたくさんあります。DAOLaunchが資金調達プラットフォームとして他と差別化できるのが、コミュニティへのエクスポージャーやマーケティングだと思っています。

マーケティングのアプローチを考えるとき、彼ら(スタートアップ)がほしいのはコミュニティであり、そのコミュニティに対してどのような機能を提供できるかスマートコントラクトによる実装が一番大事なところになってくると思います。そこでDAOLaunchはツールとして、トークンをステーキングしたらNFTがもらえるというプラットフォームを、トークンによる資金調達プラットフォームとセットで提供することにしたわけです。

トークンに対して出資するプラットフォームはすでに稼働していて、いくつものプロジェクトが登録されていて、数十件の出資が行われています。

──ちなみにこのプラットフォームは、どのようなブロックチェーンに対応しているのでしょうか?

まずDAOLaunchで作成できるトークンセール用のトークンは、現時点(※取材日は2022年6月28日)ではイーサリアムとBNB Chain(BSC)ですね。ソースコードを書くことなくERC-20、BEP-20に対応するトークンを作成できます。

また他にもAvalanche、Astar Network、Shiden Network、Polygonにも対応し、ほかのネットワークにも追加対応する方針です。クロスチェーンの相互運用性を高める準備にも入っています。

DAOLaunchではこうして作成したトークンによって、ホワイトリストに登録された投資家から資金調達ができます。また、トークンセールでは自動マーケットメーカーと呼ばれるAMM(Uniswap、PancakeSwapに対応)へ自動的にリストおよび流動性の提供ができ、ラグプル(プロジェクト開発者による資金の持ち逃げ詐欺)防止機能も搭載し、SCAM対策もされています。

グローバル展開する企業の働き方

──プラットフォーム自身は英語圏向けに設計されているようにも見えますが、日本人向けに何か意識されていたりする部分はありますか。

たとえばディールや交渉ごとに関しては、日本のマーケットは意識しています。

世界に対して日本のマーケットが大きくアドバンテージを取れる部分は、基本的に世界に対するチャレンジというのが日本の中ではかなり大きなスローガンの一つになっている点であるともいえます。やはり英語という壁が日本人には大きく、世界に対してアクセスすることがまだ一般的には難しいと思われているからだと思います。

ですがそれは日本国外から見ても同じで、日本のマーケットで日本国外のプロジェクトが認知を獲得することは難しいです。よく海外のプロジェクトやVCと話すと、日本のマーケットにリーチしたいといわれ、そこを手伝ってほしいという需要は非常に多くて、そういった意味でも僕らは日本と海外を橋渡しすることは意識しています。

──それを聞いた感想になってしまいますが、日本でもブロックチェーン企業は比較的多くの企業が海外に進出されていますが、コンテンツを持っているような企業はなかなか世界に飛び出せていない状況が続いているので、ぜひその辺りも支援していただけるプラットフォームになってほしいですね。ちなみに御社は、今後はドバイにも法人を設立するというニュースを拝見しましたが、今はどこを本拠地とされているのでしょうか。

DAOLaunchの法人はセーシェル共和国で設立しました。また別のプロジェクトを近日立ち上げる予定ですが、そちらはドバイが本拠地になる予定です。それで私も、ドバイに引っ越して来ました。

──今、いろいろなプロジェクトが今山さん中心に世界各地で展開されていると思いますが、そうしたグローバル展開の中でみなさんどのような働き方をされているのか伺ってもよろしいですか。たとえば今山さん自身がいろいろな場所でお仕事をされていて、メンバーの方々も世界各地にいらっしゃると思います。このインタビューもドバイと日本で行っていますが、そうしたことも含めてどのような働き方をされているのかということもお聞きできればと思います。

基本的には特に国籍など関係なく、直接お話をして気が合えばご一緒するとか、必要な人材を各地で雇うようなイメージです。また、Web3業界の人材の流動性は非常に速いですね。人材に関しては、日本人ではないことが多々あります。

ただ、できるだけ分散していた方がいいのかなという意識はあります。特にコミュニティ管理で役立つことが多いです。地域によって文化が違うので、コミュニティでの対応方法も異なりますし、地理的な違いによるマーケットの違いはその地域に強いスタッフがいたほうが有利ですしね。

法人の所在に関しては、今後クリプトが盛り上がっていくと思われる国へまずは行ってみて、肌感覚でそこがいいと思ったら住んでみるというやり方を続けていますね。

実際に僕はスイスのツークであるとか、マルタ共和国であるとか、いろんな国に行ってみました。マルタはVIPに対してのSTOのようなレギュレーションに基づいたトークンの資金調達モデルを最初に発行したところですが、現地に行くとまったく盛り上がっていなくて、たぶん日本のほうが盛り上がっているなというのが肌感覚であったので、2週間程度で戻ってきたということがありました。

ですがドバイに来てみたら、状況はマルタと逆でした。昨年の9月にドバイは今後クリプトを推進していくというアナウンスを発表して、わずか1ヵ月程度でものすごく大きなクリプト関連のプロジェクトがGITEX(ジャイテックス)という大きなITイベントに集まってきていて、すごく熱気を感じました。

また、いろいろなプロジェクトと交渉する中でも、これからドバイに行くという人が多くて、やはり肌感覚でドバイのポテンシャルを感じましたし、ドバイに対する興味や魅力はどんどん大きくなりました。自分もすぐにドバイに行かないと、と思いましたね。

──なるほど、実際に行動して感じた肌感覚は大切ですね。ちなみにもし日本人が御社の社風や仕事のスタイルに興味があり、仮にDAOLaunchで仕事がしたいという人は、働き方としてはリモートで仕事するのもありでしょうか。また社名に「DAO」というワードが入っているのは、DAO(分散型自律組織)も意識しているのでしょうか。

そうですね。リモート環境で働くことになると思います。

社名のDAOLaunchは、DAOを意識している部分ももちろんあります。僕らのプラットフォームの機能についても、最初はDAOのような形で誰でもトークンセールを作成できる機能にしています。トークンは一瞬で作成できますし、作成したトークンに対してトークノミクスを設定できます。

トークノミクスに関してはパワーワード的に使われている面もありプロジェクトが勝手に構築したトークノミクスは、それが本当にスマートコントラクトで保証されているかは誰にもわかりません。DAOLaunchのプラットフォームを使ってデザインしたトークンに対しては、それをスマートコントラクト上でロックをすることができる機能も付けています。

プロジェクトのファウンダーがトークンを作成して詳細を設定し、資金調達により集めた資金をどこの取引所(AMM)に上場するのかを決めたら、投資家に対する事業計画をプレゼンテーションすることができるプロジェクトのピッチ画面が設定できるようにもなっています。ここまでを自動で構築可能な機能を最初に開発しプラットフォームに実装したため、DAOLaunchと命名した背景があります。

こうして「誰でも」という形でハードルを低くすることに集中して僕らは開発を進めてきました。しかし、資金調達プラットフォームとしては、やはり実績のあるプロジェクトや期待値のポテンシャルが高いプロジェクトを集める必要もあります。ハードルが低くなったというのはものすごく良いことではありましたが、ポテンシャルの高いプロジェクトばかりが集まったかというと、必ずしもそうでもありませんでした。

特にポテンシャルの高いプロジェクトは情報のリークなど様々なことにセンシティブであったりします。DAOというのは基本的には民主化です。その民主化というのがプロジェクトの促進に繋がるものであれば大事なことだと思いますが、逆にDAOというコンセプトは、スタートアップ投資に関するプライバシーや情報のリークという面に関してはリスクとなる可能性もあります。

僕らはDAO的な側面を最初にプラットフォームとして作ってはいますが、そこから徐々に僕ら側が良いプロジェクトをみんなに勧めていくという面が大きくなってきた段階で、必ずしもDAOである必要はないという意識も強くなりました。もちろん分散型ウォレットを使うという意味では変わらずDAOの面もあるかもしれませんが。

──今の仕組みというのはDEXといいますか、スタートアップの立ち上げから資金調達、イグジットまでスマートコントラクトが自動的にやってしまうという意味でいいでしょうか。その時に、御社がプラットフォームを作っているという部分においては中央集権的な立ち位置だと思いますが、自動化されている部分は非中央集権であるというか分散化されているというイメージでいいでしょうか。

そうですね。DAOの部分に関しては当初はそこがメインで使われる想定で実装してきたので、完全にDAOに振ってしまうことも可能です。ただ、技術力の高いプロジェクトから見ると、すべてを(プラットフォーム側が提供する)スマートコントラクトで縛り付けてしまうと使い勝手が悪くなります。僕らとしては、ポテンシャルの高いプロジェクトも集めたいので、そこは少しずつ考え方も変わってきました。

プロジェクトからはマーケティングやコミュニティに対してのエクスポージャーという部分を求められているので、そうした要望に対応したNFTファーム機能等を提供する方向に変わってきたというのがありますね。

──ちなみにそうなると、プラットフォームを提供している御社は、収益モデルとしてどこでマネタイズしているのでしょうか。

マネタイズの部分は、資金調達をしたプロジェクト側から手数料をいただくほか、他のVCを紹介したり、マーケティングのサポートをしたりするときにマーケティング費用等としていただきます。いわゆる従来のクラウドファンディングの手数料に似た収益モデルですね。

Web3時代のクラウドファンディングとは

──ありがとうございます。直接御社の事業とは関係ないお話になってしまうかもしれませんが、これからのクラウドファンディングはどのように進化していくか、併せて今山さんがイメージしていらっしゃるWeb3などこの分野の将来的な世界観をどのように考えていらっしゃるか伺えますか。

クラウドファンディングは、いろいろな種類やジャンルがあるじゃないですか。その中でもエクイティクラウドファンディングのようなキャピタルゲインを意識して行う手法に限定した話をすると、やはりベンチャーキャピタルのようなお金をたくさん持っている競合に対して、クラウドファンディングの特徴は投資する人が増える、資金を集める人が増えるという話になると思うんですよね。

プロジェクト側からしてみれば、マーケットにエクスポージャーにするということは、メリットとデメリットの両方があるということをクラウドファンディングプラットフォームとしては理解しておく必要があると思います。

デメリットとしてあるのは、やはりプロジェクトの情報が漏洩する可能性があることですね。また、出資者が増えることで、それに対応するコストがかかってしまうことが一つあります。

メリットとしては、エクスポージャーすることによってコミュニティに人が多く集まるとか、それで人材が集めやすくなり、マーケティングがしやすくなることがあると思います。

そこはエクイティと比較するトークンのほうが圧倒的にクラウドファンディングの需要が高いと思います。あとはキャピタルゲインを得る以外に、トークンにユーティリティを与えることができるのもメリットだと思います。そうなると間違いなくマーケティングが重要な世界になると思います。

なので、トークンのメリット・デメリットをしっかり捉えて、プロジェクトにとってメリットが最大になるように用意をしていけば、もちろん投資家の人たちも増えていくのではないかなと考えています。

──次の質問は、DAOLaunchのリリースにもありましたDAOLaunchのアドバイザリーカウンシルとしてクリプトVCやKOL(Key Opinion Leader)とパートナーシップ契約を結ばれたというお話ですが、アドバイザリーカウンシルとはどのような組織なのか、具体的な役割とDAOLaunchとの関係を教えていただけますか。

基本的にはディールシェアや、いろんなコネクションの紹介などです。例えばプロジェクトを紹介しあったり、プロジェクトで不足している人材を知らないかというような話であったりと、スタートアップ支援について相談し合えるネットワークです。

ほかにもトークノミクスに対するアドバイジングであったり、マーケティング施策に関してインフルエンサーやメディアを紹介したり、もしくは資金調達先の紹介であったり、プロジェクトに対するアドバイスの厚みを増すための仕組みの一つがアドバイザリーカウンシルですね。

──では、次の質問に行きたいと思います。御社は2022年2月に米Microsoft社が提供するスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」に採択されましたが、スタートアップとしてどのような支援を受けていらっしゃるのか伺えますか。

やはりいろんなコネクションを紹介していただくというのは非常に力強いことでして、メディアやVCをご紹介いただくこともそうですし、あとはAzureのクレジットですね。Azureの費用が削減されるというのはものすごく僕らとしてはありがたいです。これはもう会社として純粋に助かっています。

あとはやはり実際にご支援いただいているマイクロソフトの担当者さんがもう非常に好意的で、僕らもこういうスタートアップ支援ができるような存在にならなければいけないなと非常に強く感じます。

DAOLaunchのこれから

──それでは最後の質問になりますが、御社の今後の展開についてDAOLaunchのお話でもいいですし、やってみたいことも含めて将来的な夢を伺えますか。

競争が激しい分野ですので、DAOLaunchとしてはいろいろと挑戦していきながら、先ほどお話をしたNFTファームの機能やマーケット機能をどんどん追加していきます。同時にプロジェクトにとってエクスポーズするメリットを最大化にするために、マーケティングのほかにもトークン保有者のコミュニティを増やす施策を一つ一つやっていくべきだと思っています。

また僕らとしては、プロジェクトのレベルに応じてやはりマーケティングが必要な段階のプロジェクトとそうではないものはどうしても存在し続けると思っています。例えばローンチが近づいているプロジェクトとまだ準備段階のプロジェクトでは支援の方法も違いますので、プロジェクトに合わせる必要があります。

さらには、スタートアップがその先に進み、シードラウンドやプレシードラウンドの段階になると、そこにはベンチャーキャピタルであるとかよりお金をたくさん持っている投資家が必要になってくるので、そこに対してのアプローチも必要だと思っているので、僕らはそういったフェーズのスタートアップに対しては、別のプラットフォームを構築していきたいと考えています。

既存のDAOLaunchとは別で、ベンチャーキャピタルもしくは投資家がLP(有限責任組合員)からお金を集めて運用するようなプラットフォームを、ドバイを拠点に作ろうと思っています。

これに関してはまだプロジェクトの詳細は話せないですが、今アメリカではローリングファンドという仕組みが注目されています。ローリングファンドを簡単に説明すると、一括投資ではなく、四半期ごとのサブスクリプションモデルでファンドを集め続けることができる仕組みです。

ドバイを拠点に、僕らはそのWeb3バージョンをやろうと考えています。付加価値を高めていき、ベンチャーキャピタルとして誰もが資本を自由かつフレキシブルにスケールでき、さらにLPの人たちに対する管理をドバイの法律に準拠して行えるツールを提供できるプラットフォームを開発中です。

──今、これはドバイの法律にもとづいてとお話しされましたが、もしこれ日本の企業あるいは個人がスタートアップとしてここに参加した場合、その法律や税制に関しては、どのような認識を持っていればいいでしょうか。

残念ながら、今のところ僕らが日本のプロジェクトを支援したことはなく、正直難しいですね。

やはり日本の税制や法律の問題は現時点ではなかなか厳しいというのはもちろん僕らも認識しています。僕らのプラットフォーム上でNFT販売による資金調達という方法も出そうかなとは思ってはいて、そこで何かできる可能性はあるかもしれないです。

ただ、やはり世界の進化は待ってくれないですから、この領域でスタートアップをやるならアジアであればシンガポール、中東であれはドバイ、ヨーロッパであればスイスのツークなど、どんどん有利な場所に移動していくというのも、やはり競争の醍醐味のひとつだというように感じます。

また今は、どこにいても仕事ができる時代じゃないですか。もちろん日本にも頑張ってもらいたいですけど、本当にやりたいことがあるなら、もはや日本で待つ必要はないのかなと思います。世界はどんどん先に進んでいますからね。

──貴重なお話ありがとうございました。

インタビューカテゴリの最新記事