許可型ブロックチェーンQuorumとは?事例&特徴を解説

許可型ブロックチェーンQuorumとは?事例&特徴を解説

はじめに

パブリックチェーンのEthereumは、スマートコントラクト開発のプラットフォームであり、ゲームDeFi系をはじめとする様々なDapps(Decentralized Applications)が誕生しています。

また、EthereumのtoB向けのユースケースとしては「Baseline Protocol」などが登場しているものの、スループット(単位時間あたりの処理能力)の低さやプライバシーなどの問題によって、企業が使うには不向きな場合が少なくありません。

こうした課題をクリアしつつ、ブロックチェーンの利点(改ざん耐性やスマートコントラクトなど)を享受しようと、Ethereumを拡張した「Quorum」や「Hyperledger Fabric」、「Corda」などのパーミッション型(許可型)ブロックチェーンが開発されています。なお、ここで言う“パーミッション”とは、ネットワークへのアクセス許可のことです。

基本的に企業がブロックチェーンの活用を検討する場合、これらパーミッション型のブロックチェーンが検討対象としてまず挙がります。そこで本記事では、企業でブロックチェーンの活用を検討している方に向けて、Quorumの概要とユースケースを紹介した上で、その特徴を解説していきます。

Quorumの概要とユースケースとは?

まずは、Quorumの概要とユースケースを紹介します。

J.P. Morganが開発し、Enterprise Ethereum Alliance(EEA)へ寄贈されたQuorum

Quorumは、Ethereumをフォークしたブロックチェーンであり、取引の秘匿化やネットワークへのアクセス制御などの機能が追加されたパーミッション型(許可型)のブロックチェーンです。2016年に「J.P. Morgan」によってオープンソースソフトウェアとして開発された後、「Enterprise Ethereum Alliance」(EEA)へ寄贈されました。

Enterprise Ethereum Alliance(EEA)とは?

EEAはエンタープライズ向けイーサリアムの標準化を目指し、2017年に組織された非営利団体です。Enterprise Ethereumの仕様策定などを行っており、Quorumはその実装だと言えるでしょう。

2020年8月現在、J.P. MorganやAccenture、Microsoft、Intelなど200以上の企業や団体が加盟しています。

Quorumに対応するMicrosoft Azure

Microsoftが提供しているフルマネージド型BaaS「Azure Blockchain Service」を使うことで、Quorum上でのアプリケーション開発コストを削減できます。

Azure Blockchain Serviceは、ブロックチェーンの構築やコンソーシアムのメンバー管理を容易にするだけでなく、既存のシステムやイーサリアムの周辺ツール(TruffeやMetaMaskなど)との連携も支援してくれるサービスです。

なお、Azure Blockchain Serviceを用いた開発については、以下の記事で詳しく解説しています。

Quorumのユースケース

Quorumの特徴を整理する前に、実際のユースケースをいくつか見てみましょう。

高級ブランドの真贋(しんがん)証明

「ルイ・ヴィトン」(LVMH)とブロックチェーン企業「Consensys」「Microsoft」は協力して、Quorumを活用した高級ブランド品の真贋証明プラットフォームを開発しています。

OECD(経済協力開発機構)によると、偽造品と著作権侵害物による被害は増え続けており、その被害額は全世界の貿易額の3.3%(約5,090億ドル)にも及ぶとされています。

詳しくは以下の記事で解説しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

銀行間情報ネットワーク

「INN」(Interbank Information Network)は、2017年にJPモルガンが立ち上げたQuorumベースの銀行間ネットワークです。グローバル決済のプロセスを効率化するためのソリューションであり、コンソーシアムに参加した銀行同士でのリアルタイムな情報交換を可能にします。日本からは三菱UFJ銀行やみずほ銀行、三井住友銀行などのメガバンクをはじめとして、多くの金融機関が参加しています。

参考:Largest Number of Banks to Join Live Application of Blockchain Technology

分散型のKYC基盤

「Kimlic」はQuorumベースのKYC(顧客の本人確認)基盤です。Kimlic上でKYCを一度でも行ったユーザーは、Kimlicと連携したサービスに対するKYCプロセスを繰り返さなくて済みます。

上記の他にも様々なユースケースが存在しており、主要なプロジェクトはQuorumの公式Webサイトで取り上げられています。

参考:Quorum

Quorumの特徴とは?

それでは、Quorumの特徴を解説していきましょう。

Quorumは、高いスループット(単位時間当たりの処理能力)や、取引の秘匿化(プライバシーの保護)などのエンタープライズ要件をクリアするために、以下の特徴を備えています。

  • プライバシーに配慮したトランザクション
  • パーミッション型のブロックチェーン
  • 高いスループットとファイナリティを担保するコンセンサスアルゴリズム

さらに、エンタープライズ向けの上記特徴を持ちつつ、Ethereumの開発ツール(TruffleやGanacheなど)を利用して開発コストを抑えられる点は、Quorumを活用するメリットだと言えるでしょう。

プライバシーに配慮したトランザクション

Quorum上のトランザクションは、すべてのコンソーシアムメンバーがアクセスできる「パブリックトランザクション」と、特定メンバーのみがアクセスできる「プライベートトランザクション」の2種類に分かれています。

アクセスの範囲は必要に応じて調整可能で、トランザクションは「トランザクションマネージャー」によって制御されています。

以下はQuorumのアーキテクチャを図示したものです。

https://docs.goquorum.com/en/latest/

上記の「Quorum Node」はEthereumのクライアント「go-ethereum」(geth)に、エンタープライズ要件を満たすための変更を加えたソフトウェアです。「Enclave」はトランザクションマネージャーと通信して、データの暗号化・復号化を個別に管理します。

なお、プライベートトランザクションは、取引の存在自体はコンソーシアム内の他の参加者にも認識されます。したがって、取引の存在自体を秘匿したいケースには向いていません。

パーミッション型のブロックチェーン

Quorumは承認された参加者のみがアクセスできるコンソーシアムチェーンです。先述のトランザクションマネージャーは、ネットワークの参加ノードを管理する機能も提供しています。

トランザクションマネージャーとしては、haskellで開発されている「Constellation」と、Javaで開発されている「Tessera」があります。

高いスループットとファイナリティを担保するコンセンサスアルゴリズム

Quorumは以下のコンセンサスアルゴリズムに対応しており、構築の際にはいずれかを選ぶ必要があります。

  • Clique POA
  • Raft-based Consensus
  • Istanbul BFT(IBFT)

「Raft-based Consensus」は、1秒あたり数百トランザクションを処理できるアルゴリズムですが、ビザンチン障害耐性がありません。これはQuorumが、許可されたノードのみが参加できる(信頼ベースの)クローズドなネットワークであるからです。参加ノードからリーダーが選出され、リーダーノードが作成したブロックを他のノードが同期する仕組みになっています。

一方で、「Istanbul BFT」(IBFT)はビザンチン障害耐性があるものの、Raftと比べて処理速度が遅いです。各ブロック毎に選出されたリーダーノードが作成したブロックを他のノードが検証し、過半数以上の承認が得られるとブロックが受け入れられます。

どのコンセンサスアルゴリズムもファイナリティがあります。Quorumの詳細を知りたい場合は、以下の開発者向けドキュメントをご覧ください。

参考:Quorum – Enterprise Ethereum Client

また、上記ドキュメントを参考に、Quorumネットワークをスクラッチで構築する手順を以下の記事で紹介しています。Quorumを用いた開発に興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。

まとめ

Quorumは、Ethereumの特徴や利点を引き継ぎながら、エンタープライズ要件を満たす目的で開発されているブロックチェーンです。

フルマネージドサービスのAzure Blockchain ServiceやEthereum向けの開発ツールに対応しているため、開発コストの削減が期待できます。したがって、実証実験を行う場合などにも選択肢となり得るでしょう。

一方でEthereumと同様に、デプロイしたスマートコントラクトのアップデートができない(工夫が必要)ため、ロジックが頻繁に変更される可能性がある場合は、Hyperledger FabricCordaといった他の基盤が選択肢となります。

自社でブロックチェーンの活用を検討する場合は、目的や要件に応じて各基盤を比較し、技術検証をする必要があると言えるでしょう。

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