マイクロソフト(Microsoft)のNFT活用事例とは?連携するEnjinも紹介

マイクロソフト(Microsoft)のNFT活用事例とは?連携するEnjinも紹介

はじめに

2021年5月現在、エンタメ・アート分野などを中心に、NFT(Non-Fungible Token)を活用したサービスが数多く登場しています。特に2020年末〜2021年春には、多くの企業がNFT事業に新規参入しました。このような状況のなか、実はマイクロソフト(Microsoft)も2019年頃からNFTに関する取り組みを始めています。 具体的には「Azure Space Mystery」や「Microsoft Azure Heroes」(以後、Azure Heroesと表記)といった取り組みを行っており、これらサービスはゲームコミュニティ向けのサービスを開発・運営するスタートアップ「Enjin」と連携しながら開発されています。 そして、どちらも何らかの学習やコミュニティへの貢献を行った報酬としてNFTが位置づけられています。本記事では、マイクロソフトのNFT関連の取り組みについて、Enjinの概要紹介とともに紹介していきます。

Enjinとは?

マイクロソフトのNFT関連の取り組みを紹介する前に、連携企業である「Enjin」について簡単に紹介しておきましょう。Enjinは2009年に設立されたシンガポールのブロックチェーンベンチャーであり、ゲームコミュニティ向けのサービス開発および運営を行っています。 Enjinは当初、ブロックチェーン関連の事業は展開していなかったものの、2017年にICO(Initial Coin Offering)を実施し、2,300万ドルを調達しました(Crunchbaseより)。このとき販売されたのがイーサリアム上で発行された「Enjin Coin(エンジンコイン、ENJ)」です。

ICOとは?:トークンを販売して資金調達を行う手法のこと。Initial Coin Offeringの略。

また、従来はイーサリアム関連の取り組みが多かったEnjinですが、2021年4月には、Polkadotを活用してNFTに特化したブロックチェーン「Efinity」を開発する取り組みを発表し、同時に1,890万ドルの資金調達を発表しています。 参考:Introducing Efinity: NFT Blockchain on Polkadot

Enjinが開発・提供するサービスについて

Enjinはイーサリアムを活用したデジタルアセットの開発・利用をスムーズにするソフトウェアやプラグイン、プラットフォームを提供しています(これらを総称してEnjinエコシステムと呼ばれることもあります)。サービスとしては以下のようなものがあります。
  • NFTの発行や既存のアプリ・ゲーム・Webサイトと連携可能な「Enjin Platform」
  • 主要な暗号資産とERC20, 721, 1155トークンを管理できる「Enjin Wallet」
  • NFTのマーケットプレイス「Marketplace」(独自マーケットプレイスを構築するためのAPIが開発中だが2021年5月7日現在はクローズドベータ版)
  • NFTを用いたマーケティング支援ツール「Enjin Beam」
上記のEnjinエコシステム上で流通するアセットには、すべてEnjin Coin(ENJ)が活用されており、これから紹介するEnjinとマイクロソフトが提携したゲーム内でも、Enjin CoinがNFTにおいて使用されています。

マイクロソフトのNFT関連の取り組みとは?マインクラフト対応のNFTなどを紹介

MicrosoftとEnjinがマインクラフト対応のNFTを発行

https://www.microsoft.com/AzureSpaceMystery?WT.mc_id=twc9-c9-chwarren
それでは、MicrosoftのNFT活用事例について見ていきましょう。直近では2021年2月、マイクロソフトとEnjinは共同でNFTを発行しました。このNFTは、マイクロソフトのWebサイト上で公開された宇宙探査ゲーム「Azure Space Mystery」のクリア報酬として発行されたものです。

Azure Space Mysteryとは?:著名な科学者であるCaroline Herschel氏などから様々な知識を学ぶ宇宙探査ゲームです。「科学における女性と女児の国際デー」を記念して、2021年2月11日に公開されました。

参考:https://www.4gamer.net/games/126/G012627/20210212070/ 「科学における女性と女児の国際デー」とは?:科学における女性と女児の国際デー(International Women and Girls in Science Day)はSTEM(科学、技術、工学、数学)など、一般的に女性の割合が少ないとされる理系領域の学問や役職におけるジェンダーギャップ解消を目指し、2015年12月、国連総会で定められた日。2016年から、毎年2月11日に祝われています。 NFT獲得までのプロセスは以下の通りです。
  1. プレイヤーは、故障した国際宇宙ステーション(ISS)を修理するミッションに出発
  2. ミッションに成功すると、NFT獲得のためのQRコードが表示される(Enjin Beamを活用)
  3. QRコードをスキャンするとNFTを獲得できる
宇宙探査ゲームで獲得したNFTは各ユーザーのEnjin Walletに送信され、世界でもっとも売れた人気ゲーム「マインクラフト(Minecraft)」でも利用可能です。Enjinはマインクラフトとブロックチェーンを統合するプラグイン「EnjinCraft」を提供しているため、EnjinCraftを活用しているマインクラフト内のワールド(独自のゲーム世界)「MyMetaverse Network」でもNFTが利用可能なのです。 なお、下記URLではMyMetaverseで使えるブロックチェーン互換のアセットが一覧表示されており、宇宙探査ゲームで獲得できるNFTや後述する「Microsoft Azure Heroes(Azure Heroes)」で獲得可能なNFTバッジもリストされています。 参考:Mymetaverse compatible blockchain assets

Microsoft Azure Heroes:貢献度を明示化したNFTバッジによる報酬

Azure Space Mysteryの事例以前にも、マイクロソフトはEnjinと協力して、Azure Heroesという取り組みを立ち上げています(2019年)。Azure Heroesは、さまざまな分野で優れた貢献を行った、Azureコミュニティ内のメンバーに対してNFTバッジを与えるサービスです。毎シーズン、Azure HeroesではNFTバッジが数量限定で発行されます(イーサリアムブロックチェーンを活用)。
https://www.microsoft.com/skills/azureheroes
NFTバッジは受賞したAzureコミュニティメンバーに対して配布されたQRコードをスキャンすることで発行され、受賞者にウォレットをインストールされます(発行時にウォレットアプリのインストールは必要)。取り組みとしては実験的であり、NFTバッジの付与がコミュニティ活動の活性化に繋がるかは要検証と考えられますが、所有権の証明できるNFTバッジはコミュニティに貢献した証明書として活用可能です。

Microsoft Azure HeroesのNFTは、マインクラフト内でも利用可能に

Azure Heroesで獲得したNFTバッジ内のキャラクターは、前述した宇宙探査ゲームと同様に、マインクラフトのゲーム内でも利用可能です。加えてマインクラフト上で指定されたミッションを完了すると、報酬として新たなNFTが獲得できます。 従来のゲームクリア報酬との違いは、そのアイテム(NFT)をゲーム開発者(あるいは運営企業)がコントロールできず(開発側がデータを消せない)、アイテムがパブリックチェーンに記録されているので、異なるゲーム間でそのアイテムを共用できる点です。将来的に同じNFTを多くの異なるゲームで使えるようになれば、ゲームの楽しみ方の幅が広がっていく(報酬としての価値も高くなる)可能性があると考えられるでしょう。

まとめ

今回はマイクロソフトによるNFT関連の取り組みについて紹介しました。ポイントとしては、NFTを何らかの学習成果の証明およびその報酬として活用している点です。NFT=ゲームやアートというイメージが強いかもしれませんが、今回の事例のように学習に対する報酬として位置づけ、社内の評価制度に組み込んだり、コミュニティ内での一種のステータスとして利用したりすることは可能だと考えられます。 本記事の執筆時点では、獲得したNFTを活用できるゲームやサービスの選択肢は多くありませんが、技術的にはそうした外部システムとの統合できます。したがって、外部との連携次第では報酬としてNFTの価値は大きく向上する可能性を秘めていると考えられるでしょう。
編集:原伶磨

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