【特別インタビュー:前編】Ginco COO 房安 陽平 氏

【特別インタビュー:前編】Ginco COO 房安 陽平 氏

ブロックチェーン業界で活躍するプレイヤーにスポットライトを当てる特別インタビューシリーズ、第2弾はGincoの 取締役 / COO 房安陽平氏!

前編・後編の2部構成でお届けいたします。
まずは、インタビュー前編から!

※ 本記事の最後に後編へのリンクがございます。

Gincoとはどんな企業か

今回インタビューをさせていただいたGincoは、ブロックチェーンの開発技術を活かして、国内唯一のマルチブロックチェーンウォレットや、事業者向けのマルチシグウォレットに加え、複数通貨対応のブロックチェーンノードなどのインフラ・ミドルウェア群を提供する ブロックチェーンスタートアップです。
  

特別インタビュー:前編

サービス及びブロックチェーンとの関わり

  
さっそくですが、貴社のサービスやブロックチェーンへの取り組みについてご紹介お願いします!
  

私たちは創業時から、ブロックチェーンという技術の可能性を信じ、「現実の社会とブロックチェーン技術のギャップ」を埋めるためのサービス、ソリューションを提供してきました。創業当初は特にユーザーの保有する仮想通貨のセキュリティについてギャップを感じており、ブロックチェーンウォレットを提供してきました。そこから3度のハッキング事件を経て、事業者による仮想通貨の保管やブロックチェーン技術の活用にフォーカスを当てて、エンタープライズウォレットやBaaSを提供しています。

▼ブロックチェーンサービスの立ち上げを加速する「Ginco Nodes」
https://magazine.ginco.io/post/news_release_20190219/

▼取引所向けの暗号資産管理ツール「Ginco Enterprise Wallet」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000031033.html

  
会社立ち上げ当初はウォレットの提供をおこなっていた御社が、どういった経緯でGinco NodesのようなBaaSの提供をしようと思ったのでしょうか?
  

AmazonとAWSの関係に似ています。Amazonの場合、ECサービスを立ち上げるのに作ったインフラを提供したのがAWSですよね。 我々が作ってきたウォレットサービスは、暗号化処理やノード、ブロックエクスプローラーといったブロックチェーンのコア技術の組み合わせで出来ています。そうやって積み重ねた技術資産をGinco Nodesとして提供している訳です 。

自分たちが苦労してクオリティの高いサービスインフラを構築してきたために、 他の事業者にサービスとしても提供することが可能成り立つだろうと考えました
  

Azure やAmazonなどがBaaSを提供している中、Ginco Nodesのアドバンテージは何になりますか?
  

”カスタマイズ性”、”ユーザー視点での課題感を持っている”の2点だと考えています。

ブロックチェーンはまだ未成熟な市場であるため、各大手BaaS提供会社はどういった展開をしていくのか、様子見しているように思えます。
その点、我々のように小回りが利く組織のほうが、スピードや柔軟性の点でアドバンテージがあると考えています。顧客からのフィードバックを受け、素早くプロダクトを改善していくことで、より顧客にメリットのあるサービスを提供することができます。そういった点から、まだまだ小さな企業でも戦える領域であると考えています。

もう一つは、ブロックチェーンサービス事業者として実際のプロダクトを開発し、そのインフラを整えてきたという裏付けでしょうか。課題を自分事として捉えている我々だからこそ、より高い解像度で課題解決に当たることができます。
  

Ginco Nodesの開発に当たって、気を付けた点はどこですか?
  

プラットフォームごとの仕様の違いに対応することや、ハードフォークへの対応です。

これらを各事業者ごとに行うのはハードルが高く、全員がそれぞれ個別に行う世界は非効率です。 「自分たちが負担に感じたことを新規の事業者さんには感じさせない」という姿勢で取り組むことが、新しく生まれる領域で先行した事業者の責任だと思っています。新しい事業者の方々には、こういった悩みにとらわれることなく、アプリケーション開発にきちんと集中できる環境を提供したいと思います。
  

ブロックチェーンの普及に必要な要素

各企業やスタートアップが、ブロックチェーン領域において、PoCではなく、
ビジネスとしてサービスを展開していくには、何が必要だと思いますか? また、今後ブロックチェーン業界で伸びていくであろう分野はどこだと思いますか?

 

コンシューマー向けのサービスではブロックチェーンゲームから来る、と考えています。実際に、現在進行形で複数のプロジェクトが高い熱量を持って動いているというのが最大の理由です。また、デジタルアセットであるため、オラクル問題を考えなくてもよいという点から考えても、非常に相性の良い領域です。

エンタープライズ向けでは、権利管理領域とサプライチェーン領域ではないでしょうか。 特に知的財産権と物流の持っている課題が、ブロックチェーンで実現できることにマッチしやすい点があります。

▼サプライチェーン領域のブロックチェーン活用事例
https://baasinfo.net/?cat=3

  
これらがサービスとして展開していくにはなにが必要でしょうか
  

権利管理の領域では経産省からの助成金を受けて弊社でもプロジェクトを進めております。またサプライチェーンでも例えばIBMのFood Trustなどに業界課題にフォーカスを当てたプラットフォームがそれぞれ作られています。ただし、これらのプラットフォームはそれだけで完成するものではなく、その上にそれぞれアプリケーションが必要となってきます。

ブロックチェーンはプロトコルとそれによって生じるデータベースにすぎません。それ自体を提供するのが狭義の「BaaS」な訳ですが、プロトコルとデータベースをより多くの方が使いやすいようにミドルウェアやインフラ、ノウハウを提供し、それぞれのプラットフォームの成熟度に合わせた支援を行うこともまた 広い意味でのBlockchain as a Service(ブロックチェーン・アズ・ア・サービス) だととらえております。

中・長期的には金融分野でユースケースが増えていくことでしょう。これは単に仮想通貨だけというわけでなく新しいアセットとして受け入れられるような流れが確実に起きると思っています。ただし、消費者保護の観点や法規制の問題など、クリアすべきことが多いので、時間はかかると思ってよいでしょう。

どちらも共通するのは、BaaSには「ブロックチェーンそれ自体で完結するサービス」の外に「現実的な使い勝手を高めるツールやミドルウェア、インフラ」という層があり、今はここに深い溝があるということ。これを埋めることがブロックチェーンの普及に不可欠です。
  

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