世界最大の取引所が公開したBinance Smart Chainとは?

世界最大の取引所が公開したBinance Smart Chainとは?

はじめに

世界最大の暗号資産(仮想通貨)取引所「Binance(バイナンス)」は、複数の独自ブロックチェーンをローンチしています。今回紹介する「Binance Smart Chain」は、イーサリアムで行われているようなアプリケーション開発が可能な独立したブロックチェーンです。

イーサリアム上で開発されているDApps(Decentralized Applications)をBinance Smart Chain上に移すことも可能であり、実際にこれまで複数のDAppsが移行しています。本記事ではBinance Smart Chainの概要を紹介していきます。

Binance Smart Chainの概要

Binance Smart Chainは、Binanceがローンチした独自ブロックチェーンです。パブリックチェーンのイーサリアムとの互換性を有しており、イーサリアム上で開発されているスマートコントラクトや周辺ツール(MetaMaskなど)も利用できます。

Binance Smart Chainが発表される以前にもBinanceは独自ブロックチェーン「Binance Chain」を公開していました(2019年4月ローンチ)。

Binance Chainについて

Binance Chainは、高速かつノンカストディアルな暗号資産の取引を実現する目的で開発されている独自ブロックチェーンです(ノンカストディアルとは、資産は取引所に預けるのではなく自分で管理すること)。いわゆる、DEX用のブロックチェーンだと言えるでしょう。高速取引を実現する一方で、スマートコントラクトはサポートしていません。

DEXとは?:Decentralized Exchangeの略。分散型取引所と訳されることが多い。企業が資産を預かり運営する中央集権型取引所とは異なり、暗号資産を売買する人同士が自分の秘密鍵とアドレスを活用して取引できるアプリケーションです。

また、Binance ChainのネイティブトークンBinance Coin(BNB)は、2021年4月13日現在、時価総額が第3位となっています。BNBは後述するように、Binance Smart Chainのコンセンサスに関与するためにも必要です。

なお、ネイティブトークンとは、当該ブロックチェーン上で発行・流通し、ベースとなるトークンのことを意味します。(イーサリアムであればETH、ビットコインであればBTC)。

その他、Binance ChainではBNB以外にも、BEP2やBEP8といったトークン規格に従ってトークンが発行・交換されています。

Binance Chainとの関係性

Binance Smart Chainは、Binance Chainと並行して動作し、両者は同期するように設計されています。Binance Chainの高いトランザクション性能を維持しながら、Binance Smart Chainスマートコントラクトをエコシステムに導入しています。

また、Binance Smart Chainは、Binance Chainと同期していますが、独立したブロックチェーンであるため、仮にBinance Chainが停止したとしても、Binance Smart Chainは問題なく動作します。

Binance Smart Chainの特徴

Binance Smart Chainは以下の設計原則を基にしています。

  • 独立したブロックチェーンであること
  • イーサリアムとの互換性を持つこと
  • トークンのステーキングによってコンセンサスやガバナンス※が行われること(※トークン保有者による意思決定の余地がある)
  • 異なるブロックチェーン間の通信(クロスチェーン)に対応

特徴1. EVM(Ethereum Virtual Machine)互換性

Binance Smart Chainは、Binance Chainとは異なり、EVM(Ethereum Virtual Machine)との互換性があります。したがって、イーサリアム上で開発されたアプリケーションをBinance Smart Chainに移殖可能です。

実際にイーサリアム上で開発されているDEX「Uniswap」のソースコードを基にした「Pancake Swap」などがBinance Smart Chain上で稼働しています。

EVM(Ethereum Virtual Machine)とは?:EVMバイトコードと呼ばれるコードを実行するスタックベースの仮想マシン。イーサリアム仮想マシンと訳されます。

EVM互換であるため、イーサリアムの周辺ツールも利用可能です(例えば、デジタルアセットの管理に使われる主要ウォレットのMetaMaskなど)。

特徴2. クロスチェーンへの対応

前述したとおり、Binance Smart Chain(BSC)とBinance Chainは同期して動いていますが、Binance Chain上のトークンはBinance Smart Chain上のトークンと交換できます。

Binance ChainからBSCへの資産移動については、Cosmosでも実装されているinter-blockchain communication protocol(IBC)が活用されており、BSCからBinance Chainへの資産移動については、BSC上で生成されたトランザクションをトリガーとしたイベントを発生させ、その情報をBinance Chain側で観測・参照して取り込んでいます(オラクルの活用)。

https://github.com/binance-chain/whitepaper/blob/master/WHITEPAPER.md#cross-chain-transfer

特徴3. コンセンサス

Binance Smart Chainには、トークン保有者から選出されたバリデーター(ブロックの提案者・検証者)がコンセンサスを担うDPoS(Delegated Proof of Stake)と、限られたバリデーターがブロックを生成するPoA(Proof of Authority)を組み合わせたコンセンサスメカニズムが採用されています(Proof of Staked Authority)。

ホワイトペーパーによれば、前述した設計原則に基づき、Binance Smart Chainのコンセンサスメカニズムは以下の目標を満たせるように設計されています。

  • ブロック生成時間をイーサリアムよりも短くする(例えば5秒未満)
  • トランザクションのファイナリティを1分以内に収める
  • ネイティブトークンBNBがインフレしない(ブロック生成報酬はBNBで支払われる。報酬は新規発行のBNBではなく、取引手数料からのみ支払われる)
  • イーサリアムと可能な限りの互換性を保つ
  • 最新のProof of Stakeのガバナンスが可能

実際にBinance Smart Chainでは、ブロック生成時間=3秒以内を達成したとされています。なお、コンセンサスメカニズムの詳細に関しては下記のホワイトペーパーを参考にしてください。

参考:Binance Smart Chainホワイトペーパー

特徴4. インフレしないトークン設計

前述したようにBinance Smart Chainのコンセンサスメカニズムは、Proof of Staked Authorityと呼ばれる仕組みが採用されています。ネイティブトークンが存在するブロックチェーンは通常、ブロック生成者に対して報酬が支払われ、ビットコインやイーサリアムでは、新規発行された暗号資産(BTCやETH)が報酬となります。

一方でBinance Smart Chainの場合は、ブロック生成報酬としての新規トークン発行は行われないため、他のプロトコルとは異なりトークンのインフレがありません。

Binance Smart Chainのユースケース

2021年4月13日現在、Binance Smart Chain上では様々なアプリケーションが開発されています。スマートコントラクトには、325億ドル以上のBNBがロックされており、その額は527億ドルがロックされているイーサリアムの60%強にも達しています。

参考:https://www.defistation.io/https://defipulse.com/

DeFi系アプリケーション

現状のBinance Smart Chainは、分散型金融、いわゆるDeFi(Decentralized Finance)系のアプリケーションが多く開発されています。これはイーサリアムと互換性があるがゆえに、イーサリアム上でも開発されているDeFiアプリケーションが流れてきた(あるいはコピープロジェクト)と言えるでしょう。

DeFi(ディファイ)とは?:分散型金融と呼ばれる仕組みの総称です。金融機関のような単一の主体に資産を預けたり依存したりせずに、ローン組成といった金融サービスを利用できます。

参考:https://baasinfo.net/?p=5218

イーサリアム上で開発を行う(アプリをデプロイする)またはアプリケーションを利用する際には手数料(gas代)が発生するため、開発者・利用者双方にとって金銭的な負担となるのです。こうした背景もあり、Binance Smart Chainへの移行が行われています。

【補足】Binance Smart Chainはイーサリアムと比較して非中央集権性が低いと考えられるため、どちらの方が優れているかの判断は難しいです。開発コストを下げつつ、一定のユーザーを取り込めると判断したプロジェクトが移行していると推測されます。

分散型取引所「PancakeSwap」

Binance Smart Chainでもっとも取引量とスマートコントラクトにロックされている金額が大きなDEXが、2020年9月にローンチされた「PancakeSwap」です。Binance Smart Chain上でローンチされた最初のプロジェクトとしても知られています。

PancakeSwapはUniswapというイーサリアム上のDEXのソースコードをコピーしつつ、独自機能を追加したものです。例えば、宝くじ機能を備えており、CAKE(PancakeSwap独自のトークン)を10CAKE以上保有する利用者に賞金が当たる可能性があります。

その他にBinance Smart Chain上で開発されているアプリケーションとしては、入金した金額に対しての利息を最大化する方法を自動的に見つけられる「Autofarm」(イーサリアムにおけるyearn.financeに相当)や、アルゴリズムで設定された金利に応じてトークンを貸し借りできるレンディングプロトコルの「Venus」(イーサリアムにおけるCompoundAaveに相当)などがあります。

まとめ

Binance Smart Chainは、以前から稼働していたBinance Chainと並列し、そのエコシステムを拡張させる目的で開発されている独自ブロックチェーンです。

EVM互換のアプリケーション開発・利用コストを下げ、クロスチェーン技術も採用しつつ、多くのBinanceユーザー(コミュニティ)を取り込めるのは利点だと考えられます。

ただし、ブロックを生成し取引に関するコンセンサスの形成がどの程度分散化されているかは議論の余地があり、重視する特徴(非中央集権性や開発コストなど)によって、イーサリアムなど他のプラットフォームとの棲み分けが行われるはずです。


記事執筆:常木城伸
編集:原伶磨

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