Quorum(GoQuorum)ブロックチェーンの実稼働事例:Xbox-Faster royalty settlements-

Quorum(GoQuorum)ブロックチェーンの実稼働事例:Xbox-Faster royalty settlements-

はじめに

ブロックチェーンの実稼働事例のひとつとして、マイクロソフトのコンピュータゲームのブランド「Xbox」のパブリッシャー(ゲーム制作会社や開発者)や関連する著作権者に対するロイヤリティ支払いの効率化が挙げられます。

アメリカの調査会社「newzoo」によると、世界のゲーム市場は2018年に14兆9729億円(1379億ドル)となり、今後も成長していく市場です。ロイヤリティ管理や支払いプロセスの効率化の恩恵を受ける人は少なくありません。

Xboxが活用したプラットフォームは「Azure Blockchain Service」および「Quorum(GoQuorum)」が用いて構築されており、取引データの突合(リコンサイル)および再計算にかかる時間が劇的に短縮しています。本記事では、Xboxにおけるブロックチェーン導入事例を紹介していきましょう。

大手ゲームブランドXboxが抱えていた課題とは?

https://www.xbox.com/ja-JP/games/the-medium

冒頭でも紹介した通り、「Xbox」はマイクロソフトのコンピュータゲームブランドです。消費者はXboxのWebサイトを通じてゲームなどのデジタルコンテンツを購入し、プレイすることができます。

ゲームコンテンツはパブリッシャー(ゲーム制作会社や開発者)によってXboxのプラットフォーム上で公開されており、報酬に関してはゲームの売上に応じてロイヤリティ(収益)が関係者(制作会社やミュージシャン、ライターなど)に分配される仕組みです。権利の保有者が多数存在するため、支払い先も膨大になります。

ゲームコンテンツの制作には多くの人が関与しているため、従来のXboxはロイヤリティ管理業務の増加と支払いサイクルの長さが大きな課題となっていました。というのも、従来の方法では月ごとに何万件ものロイヤリティを、オフラインのデータと照合しながらスプレッドシートで計算していたからです。

その結果、プラットフォームが充実し、関係会社やクリエイターが増えるほど、事務タスクが増加するといった悪循環を招いていたのです。Xboxの場合、プラットフォーム側で売上(ロイヤリティ)が発生してから、パブリッシャーに支払い処理を実施するまでに通常45日を要していました。

Xboxのロイヤリティ管理にブロックチェーンを導入

Xboxではロイヤリティ管理とその支払いに関する課題を解決するために、ブロックチェーンを活用しました。Xboxで導入されたのは、マイクロソフトとEY(Ernst & Young)が2018年に共同開発を発表したブロックチェーンベースのロイヤリティ管理ソリューションです。マイクロソフトは会計・税務関連サービスを強みとするEYと手を組むことで、契約関連の計算や取引処理に関する自動化に、より力を注いでいきました。

ソリューションの最初の導入先としてXboxが選択され、業務にかかるコストを大幅に削減しました(具体的な数値は後述)。

ソリューションはイーサリアムをフォークした許可型ブロックチェーン「Quorum(GoQuorum)」および、Microsoft Azureで提供されているBlockchain as a Service(Azure Blockchain Service)を活用して構築されています。

Quorum」は2020年にブロックチェーン企業「Consensys」によって買収された後、「GoQuorum」に改称されました。ただし、Quorumという名称の方が定着しているため、本記事ではQuorum(GoQuorum)と記載しています。

参考:Azure Blockchain Serviceとは?

Azure Blockchain Serviceは、Microsoft Azureが提供するフルマネージドのブロックチェーンサービスです。ゼロからブロックチェーンアプリケーションを作る場合、ネットワークの構築・デプロイや鍵管理の仕組みなどをすべて自分で担わなければなりません。

こうした作業には多くの作業が必要ですが、Azure Blockchain Serviceを利用ことで、そうした工数を大きく削減できます。開発者はいくつかのフォームへの入力とクリックだけで、Azure上でブロックチェーンネットワークを構築できるようになります。

Xboxへのブロックチェーン導入効果

Xboxにブロックチェーンを導入し、契約やロイヤリティ管理を効率化した結果、従来は45日を要していたロイヤリティの計算がほぼリアルタイム(わずか数分)で行えるようになりました。

紙で管理されていたパブリッシャーとマイクロソフト(コンテンツの販売者)間の契約はスマートコントラクトに置き換えられ、実装されたロジックに従って計算されるようになります。Xboxのチームは手作業で表計算する工数が削減されたことで、他のより重要なタスクに集中できるようになりました。

さらに、パブリッシャーにとっては、売上や収益予測をリアルタイムで把握できるようになる点も大きなメリットになります。リアルタイムに共有されるデータを基に、マーケティング戦略の立案やコンテンツの企画・改善などを迅速に行えるようになるからです。

取引データはXboxと各パブリッシャー間で秘匿

以上のようにブロックチェーン上で契約や取引の処理が行われますが、基盤として使われているのは許可型ブロックチェーンQuorum(GoQuorum)です。Quorumではプライベートトランザクション(指定されたノードの管理者のみがデータの本体を読み取れるトランザクション)を実行できるため、契約や取引の内容を競合他社に知られる心配はありません。

日本マイクロソフトの資料より

EYとMicrosoftの協働により、プラットフォームは継続発展中

Xboxに導入された著作権・ロイヤリティ管理プラットフォームは現在も開発が進んでいます。2020年12月25日には機能拡張が発表されており、EYのリリースによると主な拡張項目は以下の通りです。

  • Microsoft Azureをベースにした人工知能(AI)を活用して、契約書のデジタル化を加速し、より迅速な契約書作成を可能にする
  • 明細書と請求書をシームレスに生成し、それらをERP(企業資源計画)に統合することで、ロイヤリティ決済の処理スピード、可視性、透明性が向上
  • ブロックチェーンプラットフォームで生成された勘定項目をERPに取り込むことで、効率性と会計処理能力を高める

参考:https://www.ey.com/ja_jp/news/2020/12/ey-japan-news-release-2020-12-25-02

このプラットフォームでは、データ処理の時間が従来の(紙やサイロ化したシステムを利用したプロセスと比べて)99%短縮され、一日あたり200万件の取引処理が可能になることが実証されていると発表されています。

Xboxで導入されているこのソリューションは、本番稼働するブロックチェーンベースの財務記録システムとしては最大規模に相当するもので、今後はXbox以外のプラットフォームでも業務の効率化を大きく後押しするはずです。

まとめ

今回紹介したXboxの事例ではロイヤリティ管理とその業務を効率化するために、Azure Blockchain ServiceとQuorumが活用されています。支払いプロセスに掛かる工数を削減し、支払いの発行までに従来は45日を要していた状態から約数分にまで、コストの削減に成功しました。

ブロックチェーンを活用したソリューションの効果について、具体的な数値が公開されるケースは決して多くはありません。直近1〜2年で大企業を中心に商用利用が徐々に進んでいるフェーズであり、今後Xboxのようなケースが出てくると考えられます。

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記事執筆:椀谷将也
編集:原伶磨

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