Cosmos SDK活用のプロジェクトIRISnetとは?

Cosmos SDK活用のプロジェクトIRISnetとは?

はじめに

異なるブロックチェーン同士は通信ができず、相互にトークンの乗り入れができないことがブロックチェーンの課題のひとつとなっています(相互運用性インターオペラビリティ)の問題)。この課題を解決しようと複数のプロジェクトが進んでおり、本記事で紹介するIRISnetもそのひとつです。

IRISnetはパブリックチェーンとコンソーシアムチェーンを組み合わせたハイブリットアーキテクチャの実現を目指しており、双方の基盤の相互運用性を担保する機能を開発しています。

また、ブロックチェーンシステムとブロックチェーン以外のシステムの統合もエンタープライズでの活用に重点を置いているプロジェクトだと言えるでしょう。本記事ではIRISnetの概要を紹介していきます。

IRISnetとは?

IRISnetは異なるブロックチェーン間の通信を仲介し、相互運用性を担保するブロックチェーン基盤です。異なるブロックチェーン間の通信だけでなく、既存システムとブロックチェーンを連携するための機能も提供されています。

また、IRISnetは「Cosmos SDK」を用いて開発されており、Cosmos Hubのメインネットローンチと同時に公開されました。IRISnetはCosmos Networkの一部として機能します。

なお、Cosmosとは?という方はこちらも記事もご覧ください。

▼詳細はこちら
異なるブロックチェーンを接続するCosmos(コスモス)とは?

Cosmos SDKとは?:ブロックチェーンを構築するためのフレームワーク。SDKモジュールを組み合わせることで、特定のユーザー要件に応じてブロックチェーンをカスタマイズできる。したがって、アプリケーション固有のブロックチェーン構築が可能になる。

Cosmos Hubとは?:異なるブロックチェーン間の通信を仲介するプロジェクト「Cosmos」において、通信の仲介役を担う「Hub」と呼ばれるブロックチェーン。Cosmos Hubに「Zone」と呼ばれる様々なブロックチェーンが接続されている。

以下はCosmosとIRISnetの全体像です。IRIS HubはCosmos SDKとTendermint上に構築されたProof of Stakeブロックチェーンであり、Cosmos Hubと接続されることで、それぞれのHubと通信するブロックチェーン(Zone)上のトークンをやり取りすることができます。

https://www.irisnet.org/docs/get-started/intro.html#iris-network

また、IRIS SDKにはオフチェーンデータ処理や既存のビジネスロジックの実行を調整するサービス(IRIS Service。別名「iService」)が実装されているため、IRIS SDKを利用して構築されたブロックチェーンは、既存システム(社内システムなど)との通信が可能です。

(SDKを用いていない)他のパブリックチェーンやコンソーシアムチェーン、社内システムなどとの連携については「プロバイダ」と呼ばれるユーザーが担当し、サービスやリソースのアダプタとして機能します。プロバイダはクライアントユーザーから受信したリクエストを処理して、適切なデータを返します。

また、このようにプロバイダが提供するサービスを利用するには、次に説明するトークンが必要です。したがって、IRISnetにおける既存システムとの統合はその機能を提供するユーザー(おそらくは事業者を想定)になります。

さらに、IRISnetは分散型オラクル「Chainlink」と提携しており、Chainlinkと後述するエンタープライズ向けブロックチェーン「IRITA」は、中国政府が主導する国家ブロックチェーン「Blockchain-based Service Network(BSN)」に統合されています。

参考:https://www.irisnet.org/docs/https://medium.com/irisnet-blog/ama-recap-bsns-interoperability-brought-by-irisnet-irita-e17b6a33cba6 

マルチトークンモデルとコンセンサス

IRISnetのコンセンサスエンジンとしてCosmosと同様、「Tendermint」が採用されています。TendermintはBFT系のProof of Stake(PoS)であり、コンセンサスノードとなるにはトークンのステーキングが必要です。

ステーキングとは?:トークンをコントラクトに預け入れて、ネットワークに貢献する行為のこと。預けたトークンの量に応じて、ステーキング報酬が分配される。

IRISnetでは「IRIS」と呼ばれる独自のトークンが流通しており、以下の3つの役割を担っています。

  • ステーキング
  • トランザクション手数料
  • iService(IRIS Service)利用料

トランザクション手数料とiService利用料については、将来的にCosmos Networkでホワイトリスト登録されたすべてのトークン(Photonなど)が使えるようになる予定です(デフォルトはIRISトークン)。

なお、IRISトークンの総供給量は20億IRISであり、分配比率は以下のようになっています。

https://research.binance.com/en/projects/irisnet

IRISnetの開発チーム

IRISnetのコア開発チームとしては、「Bianjie Intelligent Technology Co.,Ltd.(Bianjie AI)」が挙げられます。同社は2016年に設立された上海のスタートアップであり、ヘルスケアや金融業界を注力領域と位置づけ、ブロックチェーン基盤を用いたプロダクトやソリューションの開発を行ってきました。

エンタープライズ向けプロダクト「IRITA」とは?

IRISnetのコア開発チームであるBianjie AI社は、2020年3月にエンタープライズ向けに「IRITA」を公開しました。IRITAはCosmosおよびIRISnetのエコシステムにおける最初のコンソーシアムチェーンです。

暗号化された取引データは所有者の許可が無ければ第三者に共有できません。また、NFT(代替不可能なトークン)の実装も可能であるため、知的財産など資産のデジタル化が可能です。

IRITAにはPoCなどに適したオープンソース版(Lite版)とProfessional版が存在します。Professional版では認証機能とそれに基づいたデータ共有やエッジコンピューティング、エンタープライズレベルのアイデンティティ管理を可能にする専用サーバーなど、より高度な機能が提供されています。

参考:https://medium.com/irisnet-blog/team-behind-irisnet-open-sourced-its-enterprise-blockchain-product-irita-fe6da7295987 

開発ロードマップ

ホワイトペーパー公開時点では、開発フェーズが4段階に分かれており、2021年1月現在は3段階目の「KUAFU」の開発が進んでいます。以下はKUAFUとその次の開発フェーズである「HOUYI」(2021年7月以降)の概要です。

  • KUAFU:IRIS Hubとブロックチェーン(Zone)の連携の実現、モバイルクライアントのバージョンアップ、IRIS Service(iService)のサポート
  • HOUYI:IRIS Network、SDK、モバイルクライアントの改善

まとめ

現時点では国内でブロックチェーンに取り組む企業がIRISnetを用いて何かシステム開発するシーンはほとんど無いかもしれません。

しかしIRISnetはブロックチェーン間およびブロックチェーン以外のシステムとの連携を重視しており、さらにChainlinkやBlockchain-based Service Networkとの連携・実装も行っています。したがって、今後は(特に中国において)重要なプロジェクトのひとつになる可能性があると考えられるでしょう。

なお、BaaS info!!ではCosmosについても紹介していますので、興味のある方はこちらもご覧ください。

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異なるブロックチェーンを接続するCosmos(コスモス)とは?
インターオペラビリティとは?CosmosとPolkadotの概要と違いも解説

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