ブロックチェーンメディア「BaaS info!!」(バース・インフォ)では、ブロックチェーン業界で活躍する方々へのインタビュー記事を不定期で掲載しています。
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今回のゲストは「ステラエックス株式会社」CEOの平井威充(ひらい たけみち)さんです。インタビュー前編では同社のSNS型のオリジナルコイン発行アプリ「island」を中心に、ブロックチェーン活用のメリットや、トークンと電子マネーの違いなどについて伺いました。
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現金は生々しい?コミュニティ通貨が人のつながりを生み出す理由|ステラエックスCEO平井威充|インタビュー#01
後編となる本記事では、island開発のきっかけと今後の展開、ブロックチェーンを導入するにあたって大事なポイントを伺っていきます。
【プロフィール】
平井 威充(ひらい たけみち)さん
大学院卒業後、三菱UFJ信託銀行にて企業年金の資産管理・運用業務に従事。その後、人事部にて新卒・中途採用業務を経て退職。2016年からフリーランスとしてWebページの解析、データ分析業務などを行う。また、ブロックチェーン関連業務にもエンジニアとして携わり、2018年1月ステラエックス株式会社を設立。
SNS型のオリジナルコイン発行アプリ「island」開発のきっかけとは?
―ここまで居酒屋や地域、家族といった様々なコミュニティで、コインやislandのアプリをきっかけに人のつながりが生まれているという話を伺ってきました。islandを作るきっかけとなった出来事や課題意識があればお聞かせください。
islandの発想の基になっているのは私の原体験です。私の出身地が香川県の小豆島でして、瀬戸内海に浮かぶ小さな島でした。高校時代までは小豆島で過ごして、大学進学と同時に関西に出てきました。
小豆島にいた頃は都会に憧れ、都会って良いなと漠然と思っていました。しかし、大学進学以降現在までに大阪・京都・東京に住んだのですが、都会のことがある程度分かったときに、やっぱり田舎って良かったなと思うんですよ。
―それはどうしてですか?
やっぱり田舎は人と人とのつながりが温かいなと思うんですよね。ご近所同士での物々交換とかも未だにやりますし。親が畑を持っていて穫れた野菜をあげたりするんですよね。
一方で都会は人と人とのつながりが希薄になっている感じがします。たとえば、困ったときにマンションの隣人に対して助けを求めるのはなかなかハードルが高い。人とのつながりの希薄化っていうのは都会の課題のひとつだと思いますね。
人との温かいつながりを作っていきたいというのがまず発想としてあって、じゃあどんなサービスにしたら良いのかなと考えたときに、自分の生きやすい場所でクローズドに完結するようなコミュニティが良いよねと。であるならば、小豆島みたいな(クローズドなコミュニティの)バーチャルな島を作りたいなと思うようになりました。
実は「island」という名前もそこから生まれているんです。ひとつひとつのコミュニティを島と捉えて、そこでひとつの文化が形成できるようにトークンが機能すれば良いなと思って作っています。
islandを通じて将来的に実現したいこと
―islandのようなクローズドコミュニティが都心部にも作られていくことでどんな社会が実現できると思いますか?
islandを通じたライフマネジメントを将来的にやっていきたいと思っています。私はライフスタイルマネジメントと言ってるんですけれど。これまでは終身雇用で60代まで同じ会社で働くのが当たり前な時代でした。でも最近は副業(複業)が普通になって、色んな生き方や多様性が認められる時代になってきています。
そのなかで「どんな生き方をしたら良いのか」という問いかけを、今後色んな人が考え始めるはずなんですよ。自分自身も今後どういう生活や人生を送れば良いんだろうって結構悩むところです。
そうした悩みを抱える人を助けるにはどうしたら良いのかなって考えると、いままで会社だけだった世界からひとつ抜け出して、自分の好きなコミュニティに入ってみて、新しい世界観を発見してみるのが良いんじゃないかと思います。そうすると違った生き方が見つかるはずで、そのサポートをしていきたいという目標があります。
新しい生き方を見つけるひとつのきっかけとしてislandがあって、まずはislandの(アプリ内で作られた)コミュニティに入って、色んな人と繋がってみることができれば良いと思っています。
―ありがとうございます。いまの時代に必要なサービスになりそうですね。そうした将来像を実現したいとき、ブロックチェーンを使っているからこそ考えられる今後の展開などはありますか?
まさに、ライフスタイルマネジメントについて考えたときに、その人が(コミュニティ内で)どんな価値を提供してきたのかを履歴として残せるようにしていきたいですね。その履歴をブロックチェーンで管理できるようにしたいと考えています。
我々としてはブロックチェーン技術を使って課題を解決していくというよりも、あくまでも改ざん耐性があって履歴を正しく管理できるという点で、ブロックチェーンが使えると考えているだけであり、ブロックチェーンそのものは一つのツールとして考えています。
―ひとつのツールとしてブロックチェーンを使っていきながら、他のテクノロジーなども必要に応じて使って課題解決をしていこうということですね。
そうですね。
ブロックチェーン普及のハードルとは?
―ありがとうございます。改ざん耐性があり、履歴管理などに使えるブロックチェーンですが、国内で普及する上でハードルに感じている部分はありますか?
ブロックチェーンってシステムの発想としてはものすごく良いと思うんですよね。ただ、効果が見えづらいというのはあると思います。それにAIやIoT、VRってなんだか格好良いじゃないですか(笑)。
IoTだったらたとえば、ウェアラブル端末で自分の健康状態が数値で可視化されて、生活習慣が目に見えて分かるんですよね。一方でブロックチェーンは導入後の効果が伝わりづらいということがあります。そこがお客様と会話をしていて普及するハードルとなっているのではと感じています。
ブロックチェーンファーストではなく、課題ファースト
―なるほど。確かにブロックチェーンは見えづらい部分がありますね。最後に、ブロックチェーンを使おうとしている企業さんへのメッセージがあればお聞かせください。
私自身、ブロックチェーンを知ったのが2012年くらいで、そこからずっと情報を追っています。現在に至るまでブロックチェーンを活用した様々なユースケースが国内外で出てきていますが、ブロックチェーンありきの事例も多いと思っています。
ブロックチェーンファースト的な考え方の中で新しい価値を提供していくというアプローチも良いですが、やはりビジネスの原点はお客様がいて、お客様がそのサービスを使ってどんな気持ちになるのか?だと思うんですよね。自分自身にも言い聞かせている事ですが、お客様の状況を踏まえた上で、ブロックチェーンが適しているかどうかを考えていく必要性は今も昔も変わらないです。
我々もお客様がどこに課題を抱えているのか?という部分から入っていって、たとえばブロックチェーンを導入すれば業務コスト下げられそうですよね、という話をしています。
―まずはお客様の課題ファーストありきで、課題に対してブロックチェーンが最適解なら使うということですね。非常に大事だと思います。本日はお時間をいただき、ありがとうございました!islandの今後の展開も楽しみにしています!
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現金は生々しい?コミュニティ通貨が人の繋がりを生み出す理由|ステラエックスCEO平井威充|インタビュー#01