コンテンツ産業でブロックチェーンは使えるのか?課題と可能性の整理

コンテンツ産業でブロックチェーンは使えるのか?課題と可能性の整理

はじめに

コンテンツ産業とは「映像(映画、アニメ)、音楽、ゲーム、書籍などの制作・流通を担う産業の総称」です(「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」経済産業省より)。日本のコンテンツは世界的にも人気が高い一方で、コンテンツ産業自体の市場規模はほぼ横ばいで推移しています。

本記事ではコンテンツ産業の課題として以下の2点を取り上げ、それら課題に対してブロックチェーンを活用できる可能性について整理していきます。

  • クリエイターの著作権問題
  • コンテンツの新たな収益化モデルの必要性

まずはコンテンツ産業の現状について紹介していきましょう。

コンテンツ産業の現状

日本のコンテンツ産業の市場規模については、いくつかの統計資料がありますが、経済産業省の資料によると2018年時点で約10.6兆円と推計されており、今後もゆるやかに拡大していく見込みです。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/202002_contentsmarket.pdf

また、国内・国外ともにコンテンツ産業は、その市場規模に占める映像やゲームの割合が大きく、世界的にはゲームの割合が増加傾向にあります。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/202002_contentsmarket.pdf

コンテンツ産業の特徴

コンテンツ産業の特徴としては、非コンテンツ産業に対する経済的な波及効果の大きさが挙げられます。すこし古いデータですが、「財団法人デジタルコンテンツ協会」が2010年に行った試算によると、製造業などの非コンテンツ産業への波及市場は、コンテンツ産業の約1.7倍になるようです。

コンテンツ産業の経済波及効果の大きさが分かる事例としては「ポケモン」が代表的であり、関連キャラクターグッズなどの売上は約3兆円に及んでいます。そのほか、大ヒット映画のロケ地に関する観光客増加なども挙げられ、朝日新聞によると北海道の道東を舞台にした中国映画「狙った恋の落とし方。」(原題:非誠勿擾)のロケ地だった「阿寒湖」への中国⼈観光客は約13倍に増加したとのことです。

コンテンツ産業の課題

一方で国内におけるコンテンツ産業は課題も抱えています。市場規模の観点から見ると、2018年までの10年間にわたって市場規模がほぼ横ばいで推移しており、新たな市場開拓や付加価値の創出ができていない点が課題です。

さらに、デジタルコンテンツが増加するにつれて、誰もがコンテンツクリエイターになれるプラットフォームも登場しましたが、同時に以下のような課題も顕在化しています。

課題1.クリエイターの著作権侵害

デジタルコンテンツは複製や改変が容易であり、その増加にともない著作権関連のトラブルも増えていくと予想されます。近年で大きく報道された事例として挙げられるのが、2017〜2018年に話題となった漫画の違法アップロードサイト「漫画村」を巡る著作権違法のトラブルです。

漫画村では人気漫画「ワンピース」をはじめとしたコンテンツが5〜7万点も無断掲載され、出版社などの著作権を侵害しました。2020年11月現在、漫画村の運営者は著作権を侵害した疑いで逮捕されましたが、漫画村に限らずデジタルコンテンツの複製による著作権の侵害は少なくありません。

こうした事例を踏まえると、著作権管理を厳格化する必要性は言うまでも無いように思われます。しかし一方で、著作権管理を厳格化すると、コンテンツ取引の流動性を低下させてしまう可能性も否定できません。限られた市場のみでしか取引ができない場合、結果的に作者の権利を制限したり、利益を限定的なものにしてしまう恐れがあります。

したがって、著作権保護と流動性の確保を両立する策が求められます。

課題2.n次創作物の権利担保とマネタイズモデル

n次創作されたデジタルコンテンツの権利と、マネタイズの仕組みにも検討の余地があります。前述したように、現在では誰もがコンテンツの制作者となれるプラットフォーム(YouTubeやニコニコ動画など)が登場していることもあり、n次創作コンテンツが結果として、原コンテンツの人気や売上向上に寄与するケースが少なくありません。

n次創作によって原コンテンツの人気や売上が向上したコンテンツの事例としては、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が開発したボーカロイド「初音ミク」が好例だと言えるでしょう。初音ミクは現在、国内外で様々な関連コンテンツがn次創作されています。

n次創作とは?:あるコンテンツ(=原コンテンツ)をもとに別の新たな(派生的な)コンテンツを創作すること。

ボーカロイド(VOCALOID)とは?:リアルな歌声を合成するためのソフトウェア。ヤマハが開発した音声合成技術および、その応用製品の総称のこと。

初音ミクとは?:クリプトン・フューチャー・メディアが発売している音声合成・DTM用のボーカル音源、およびそのキャラクターのこと。

初音ミクの原著作はクリプトン・フューチャー・メディア社が有しています。創作活動の連鎖によって関わる権利者が多くなるほど、n次著作物の利用申請には複雑な手続きを踏まなければなりません。

初音ミクの場合は、同社が発行したライセンスに準じて創作活動をすることでn次創作がしやすいように、権利関係を処理していますが、初音ミク以外にもn次創作が日常的に行われる昨今では、そうした創作物の著作権をどう管理するか?については課題となっています。

さらに、n次創作コンテンツに対する収益化モデルについても確立させることで、コンテンツ産業の市場拡大を図れるのではないか?という意見もあり、実際に経済産業省は2019年3月に「ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会」での検討結果をまとめたレポートを発表しています(検討会の概要については次のセクションを参照)。

以上の課題に対して、ブロックチェーンが活用できる可能性があります。次のセクションではそのメリットを整理していきましょう。

コンテンツ産業にブロックチェーンを活用するメリットとは?

ブロックチェーンには以下の特徴があるため、デジタルコンテンツの権利者登録や収益分配、支払い機能の実装が可能です。

  • 改ざん耐性の高さ
  • データの追跡可能性と透明性の高さ
  • 管理コストの分散及び取引コストの低減が可能

ブロックチェーンに書き込まれたデータは事後的な改ざんが困難であり、取引データを過去に遡って追跡できます。

なお、こうしたデータのトレーサビリティ(追跡可能性)の実現は、サプライチェーンの透明性担保・高度化にも応用可能であり、実際に食品・小売分野では「IBM Food Trust」のようなブロックチェーン活用プラットフォームが稼働しています。

また、パブリックチェーンのBitcoinやEthereumといったプログラム上では、(対法定通貨建てで)1兆円以上のアセットが乗っています。これらは中央管理者のいない環境で動いており、同様の金額を既存の中央集権的システムで動かしたときと比べて、管理コストが低減(分散化)されていると考えられるのです。

参考:ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会

前述した「ブロックチェーン技術を活用したコンテンツビジネスに関する検討会」のレポートでは、音楽のn次創作の発信・視聴サービスが具体的な検討テーマとして挙げられています。そこでは、原コンテンツとn次コンテンツの制作者に関する権利関係の管理や、利用者による支払い対価の分配処理(n次創作者のマネタイズ方法の確立)について検討が行われました。

具体的な案については、権利者が特定のコンテンツをシステムから取り下げた場合、取下げ以降のn次創作を参照できなくする機能の実装が挙げられます。そのほか、トークンなどの活用によって分配率に従った支払額を算定する機能の枠組みなども検討されています。同様の仕組みはゲームや映画、電子書籍などでも転用可能であり、今後実装されていくかもしれません。

https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190405006/20190405006-1.pdf

まとめ

本記事ではコンテンツ産業に焦点を当て、その課題とブロックチェーン活用のメリットを整理しました。重要なポイントは、著作権などの権利をプログラマブルに管理でき、その履歴を追跡できるという点です。権利者が分かれば、当該人物(あるいはアドレス)に対する支払いを行うことができます。

以下の記事では、コンテンツ産業における国内外のブロックチェーン活用事例を紹介していますので、本記事と併せてぜひご覧ください。

参考資料:
コンテンツ産業の現状と 今後の発展の⽅向性
コンテンツの世界市場・日本市場の概観
平成30年度 ブロックチェーン技術を活用した コンテンツビジネスに関する検討会 報告書
ブロックチェーンの可能性
「漫画村」運営者?星野容疑者を逮捕 著作権法違反容疑:朝日新聞デジタル
『二次創作からn次創作へ、世界へ広がる「初音ミク」のクリエイティブ・イノベーションの仕組み』2017年2月24日開催セミナーレポート 第2部|公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会

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