半導体業界でのブロックチェーン活用事例・取り組みとは?

半導体業界でのブロックチェーン活用事例・取り組みとは?

はじめに

半導体はスマホやパソコンだけでなく、家電や産業機械など幅広い領域で、その中核部品として利用されています。2020年以降、IoTデバイスの普及や自動運転技術にかかるセンサー、画像処理、車体制御などの部分で、成長が見込まれる業界です。

そんな半導体業界でブロックチェーンを活用する動きが進んでいます。2020年7月、半導体関連の企業2,000社が加わる業界団体「国際半導体製造装置材料協会」(SEMI)が主導し、サプライチェーン管理システムを構築すると日本経済新聞が報じました。2021〜2022年の実用化を目指すとされています。

そこで今回は、半導体関連の企業におけるブロックチェーン活用の取り組みを紹介していきましょう。

半導体:電気を通す導体と、電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質。家電やスマホ、通信・社会インフラに広く使われている。

模倣品(偽造品)やESG対応が課題の半導体業界

分業が進んでいることもあり、半導体業界はサプライチェーンの関係企業が多いのが特徴です。企業単独では全体像を把握することが困難で、製品の追跡も容易にはできません。サプライチェーン管理が難しいこともあり、模倣品(偽造品)の流通も多いようです。

業界に特化した網羅的な統計データは多くありませんが、アメリカの業界誌「Industry Week」の記事によると、半導体業界は偽造品によって年間750億ドルの被害を受けているとのレポートがあります。同記事は2013年のものなので、2020年現在ではさらに被害額が大きくなっている可能性が高いです。

また、ESG(環境・社会・ガバナンス)を企業が重視する動きが広まっている点も、半導体業界がサプライチェーン管理を強化するインセンティブとなっています。模倣品や環境負荷の高い製品への対応が求められているのです。

なお、偽造品対策にブロックチェーンを用いるケースは他の領域でも進められており、例えばブランド業界が挙げられます。Louis Vuittonを擁する「LVMH」の事例などは当メディアでも過去に紹介しました。

また、サプライチェーン管理においては「Starbucks」などがブロックチェーンの活用に取り組んでいます。

半導体業界でブロックチェーンを活用できるポイント

ブロックチェーンに一度書き込まれたデータは仕組み上、改ざんが困難です。Hyperledger FabricCordaなどのブロックチェーンを基盤とする分散ネットワークでは、特定のルールに基づいて各トランザクションが検証され、参加者の保持する台帳の整合性が担保されます。

改ざん困難であるがゆえに、記録されたデータは証跡として使うことができ、さらに利害関係にある企業同士であってもデータ改ざんといった不正が困難であるため、企業を横断したデータ連携に使えるのです。

上記のようなブロックチェーンの特性を利用して、多くの事業者同士がデータをやり取りしている事例はすでに存在しており、例えば国際貿易でのDXを進める「TradeLens」などが挙げられます。

また、他の業界であれば、上記のアプローチ(ブロックチェーンを活用して課題解決を図る)が基本ですが、半導体業界の企業の場合、ブロックチェーンの性能や機能を拡張するコンピューティングの領域での研究開発に参加しているケースが少なくありません。

例えば、機密情報をいかに扱い、計算するか?というテーマは、ブロックチェーンを活用する上で研究課題になっています。この文脈で、セキュリティレベルを確保しながら実用的な計算能力を確保するための機密コンピューティングが研究されており、大手半導体メーカーやHyperledgerといったブロックチェーンコミュニティが取り組んでいます。

半導体×ブロックチェーンの事例や取り組みを紹介

それでは、半導体業界の企業がブロックチェーンに取り組んでいる事例を紹介していきましょう。冒頭で紹介した国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は、サプライチェーン管理にブロックチェーンを導入しようとしていますが、個別企業はどのようにブロックチェーンに取り組んでいるのでしょうか?

Samsung Electronics

半導体業界の最大手「Samsung Electronics」(サムスン電子)は、積極的にブロックチェーンに取り組んでいる企業のひとつです。

まず、同社の主力スマホ「Galaxy」シリーズには、仮想通貨(暗号資産)対応のウォレット機能が標準搭載されています(一部の国のみ)。2020年6月にはアメリカの大手暗号資産取引所「Gemini」と提携し、Samsungのスマホウォレットから直接、Geminiで暗号資産の取引ができる体制を整えました。

ウォレットはパブリックチェーンのEthereumなどで開発されるDapps(分散型アプリケーション)を使う際の入り口となるため、スマホ市場でトップシェアを誇る同社がウォレット分野に投資するのは、Dappsやトークンの普及を見据えての戦略かもしれません。

また、韓国のブロックチェーンベースのIDコンソーシアム「Initial DID Association」をLGなどと共に立ち上げており、個人がスマホなどで自己主権型/分散型IDを管理できるアプリ開発に協力しています。

以上のようにSamsung Electronicsはスマホを軸にしてブロックチェーンに取り組んでいますが、グループ会社のITコンサルティング企業「Samsung SDS」がは、多くのブロックチェーンプロジェクトを推進しています。同社は独自のブロックチェーンソリューション「Nexledger」を開発・提供しており、異なるチェーン同士の通信を可能にするインターオペラビリティ(相互運用性)の問題にも取り組んでいます。

Intel

ロジック半導体大手の「Intel」は、主要なエンタープライズ向けのブロックチェーンコミュニティである「Hyperledger」や「EEA」(Enterprise Ethereum Alliance)、「R3コンソーシアム」に参加しています。特にHyperledgerでは「Hyperledger Sawtooth」にコード提供を行うなど、オープンソースへの貢献を行っています。

また、同社が開発するCPU内に設けられた「Intel SGX」というセキュリティ機能を用いた研究開発も進行中です。Intelは機密コンピューティングのコンソーシアムである「Confidential Computing Consortium」にも参加しています。

その他、2020年5月には「Ant Financial」の子会社「Ant Blockchain Technologies」とパートナーシップを締結し、Intelチップのリースのサプライチェーンにブロックチェーンを導入する予定です。

AMD(Advanced Micro Devices)

CPUの分野ではIntelの競合となる半導体メーカー「AMD」もまた、ブロックチェーンに取り組んでいます。まず、Ethereumのパブリックチェーンを活用して、企業間のデータ連携をセキュアに行うイニシアチブ「Baseline Protocol」に参画しています。

なお、Baseline Protocolについては以下の記事で解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

また、AMDは2019年12月より、ブロックチェーンゲームを開発するコンソーシアム「Blockchain Game Alliance」(BGA)に参加しています。同社の発表によれば、ハードウェアメーカーとしては初の参画で、ブロックチェーンゲーム関連の技術開発と普及をサポートするようです。

さらに、同社はブロックチェーン企業「ConsenSys」とジョイントベンチャー「W3BCLOUD」を設立しており、2020年6月には合計2,050万ドルの資金調達を完了しました。W3BCLOUDは、ブロックチェーンやAI、仮想現実のための分散コンピューティングリソースを提供するデータセンターを設立する予定です。

まとめ

本記事では半導体業界の企業によるブロックチェーンへの取り組みを紹介しました。冒頭に紹介したようなサプライチェーン管理といった活用事例のほか、コンピューティングの中核となる半導体においても業界大手の取り組みが見られます。

また、市場シェアトップのスマホブランドを擁するSamsung Electronicsの取り組みは、他の企業と比較してユニークだと言えるでしょう。グループ会社のSamsung SDSはインターオペラビリティの問題にアプローチするエンタープライズ向けブロックチェーンを開発しながら、複数のプロジェクトを推進しています。したがって、Samsungグループの取り組みにも要注目です。

参考資料
ブロックチェーンで半導体の供給網管理 偽造品を排除
The ‘Ticking Time Bomb’ of Counterfeit Electronic Parts
Samsung Blockchain | Apps – The Official Samsung Galaxy Site
Samsung Doubles Down On Bitcoin And Crypto—Gemini Exchange Integration Revealed
Apple Takes Top Spot in Q4 2019 Worldwide Smartphone Market While Huawei Rises to Number 2 Globally for 2019, According to IDC
LG, SK Telecom, Samsung to launch blockchain digital identity service
Samsung SDS expands enterprise blockchain cloud
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