ロジスティクス×ブロックチェーン 解決する課題と動向

ロジスティクス×ブロックチェーン 解決する課題と動向

はじめに

ITの急速な進化・普及により、消費者行動も多様化している近年、ロジスティクスの世界は大きく変化しつつあります。

私たちがECサイトで商品を購入すると、数時間で自宅までその商品は届きますし、24時間営業のコンビニエンスストアで商品が欠品しているところなど、ほとんど目にすることはありません。

このように、ロジスティクスは私たちの生活を豊かにしてくれる存在です。

しかし、消費者の購買行動を支えるロジスティクスには、『非効率性』という大きな課題が存しており、業界関係者を悩ませています。

近年、ブロックチェーン×ロジスティクスは親和性が高く認知され、ロジスティクスにおける『非効率性』という最大の課題を解決する上で「ブロックチェーン」という存在は必要不可欠な存在になりつつあります。

現状ロジスティクスの課題・目指すべきビジョン

1)生産・サプライチェーン等、あらゆるフェーズでのコスト効率化
2)在庫管理の適切化
3)IoT化に伴うサービス提供及び社会物流の即時化・高度化

『非効率性』という現状のロジスティクス分野における課題は、上記(1)~(3)の実現を妨げています。
では、ブロックチェーンをロジスティクス分野に導入することで、いかなるメリットが生じるのでしょうか?

以下では、主なメリットを3つ紹介します。

生産プロセスの効率性向上

ブロックチェーンは、商品の生産効率を向上させ、上記(1)を実現します。

ブロックチェーンベースのサプライチェーンは、不正の難しさと透明性の観点から、BtoBにおける信頼関係をより確固なものにします。

そして透明性が向上することで、紙面での請求書は不要となるのみならず、各フェーズでの監査コストが改善されるのです。

サプライチェーンのブロックチェーン化によって節約可能なコストは、数百万ドルにものぼると考えられており、コスト削減に最適な手段だと言えるでしょう。

現在は既に実稼働している「TradeLens」や、「 GSBN 」といった事例も数多く見受けられ、業界の最大手を巻き込みながら、その輪は広がっています。

在庫管理・追跡の適切化

また、ブロックチェーンは上記(2)につき、 在庫不足や販売機会の損失、余剰在庫の発生を防くべく、商品の在庫管理・追跡を適切化します。

また、ブロックチェーンは、企業がマクロレベルのみならずマイクロレベルでも商品管理することを容易にします。

さらに、商品の流れをブロックチェーン上で完全に追跡することが可能となり、消費者も不可逆的で正確性の高い商品情報を収集できます。

たとえば、食品の原産地や新鮮さにこだわる消費者は、ブロックチェーンを用いることで、常に食品の情報や鮮度を明確に把握できるようになるのです。

IBM Food Trustは、こういった課題を解決すべく稼働している最たる事例でしょう。

請求・決済・物流の即時化

上記(3)につき、ブロックチェーンは、効率的かつ安全性の高いシステムを通じて、請求・決済の即時化にも役立ちます。

既存システムにおけるBtoB請求及び決済は、大規模な商品取引であればあるほど時間を要する上、取引に何らかのトラブルが発生した場合、商品の流れを食い止めてしまうことに繋がりかねません。

そこで、ブロックチェーンを導入することで、各企業はスマートコントラクトを利用して取引プロセス全体を自動化し、正確性をも高めることが可能となります。

生産業者から消費者にかけて、いわゆる“シームレスな物流”を実現し、企業は円滑かつ迅速に、商品を人々に届けられるのです。

ブロックチェーン導入のハードル

ロジスティクスにブロックチェーンを実装するためには、乗り越えなければならないハードルがいくつかあります。

その中でも、特に問題視されているハードルは主に以下の3つです。

①既存エコシステムへの統合

既存のエコシステムをブロックチェーンベースに一新するためには、開発費や実装費など、巨額の費用がかかる上、高い技術力も要されます。

もちろん、ブロックチェーンがロジスティクスに及ぼす恩恵について、長期的な視点で見れば享受できるメリットの方が大きいことは自明です。

しかし、ブロックチェーンエンジニアが世界的にもまだまだ数少ない点などを考慮すると、既存のエコシステムにブロックチェーンを統合する壁は高いとの意見もあるのが現状です。

②異なるブロックチェーン間の非互換性

仮にブロックチェーンがロジスティクス分野に導入されても、サプライチェーン上にあるすべての企業が同モデルのブロックチェーンを活用していなければ、その非互換性ゆえに、滞りなくデータを管理することは難しいと考えられています。

たとえば、ブロックチェーンを基盤としたカーシェアリングサービスを思い浮かべてください。

車の利用権を管理するブロックチェーンと、支払いなどで使用されるプライベートコインを管理するブロックチェーンの間には互換性がなく、シームレスに連携させることは難しいとされています。

しかし当該課題点については、明るい兆しが見え始めています。

実は昨月末、富士通とBOOSTRYが「異なるブロックチェーン間におけるデジタルアセット取引に成功し、サービス提供に向けたビジネスモデル検討を開始」すると発表しているのです。

さらに、『ブロックチェーンのインターネット』とも称されるCosmosも、インターオペラビリティ(相互運用性)とスケール性を有する独立したブロックチェーンネットワークとして、広く注目を集めています。

▼参考
インターオペラビリティとは?CosmosとPolkadotの概要と違いも解説

③各国法規制への対応

グローバル取引におけるロジスティクスにブロックチェーンを導入する場合、大きな問題となってくるのは法規制です。

各国政府の先進的技術についての法規制対応の差異によっては、ブロックチェーン上でのデータ管理が難しいケースも出てくると考えられます。

国境を越えた取引にもブロックチェーンを活用する場合、世界各国が足並みをそろえ、国際的な法規制や明確な基準を定めていく必要があります。

また、法規制への対応はグローバル取引のみならず、国内取引についても同様の課題です。個人情報管理やデジタルアセットに関する税規制など、法律面についてはまだまだ課題が山積みとも言えるでしょう。

国際的なロジスティクス×ブロックチェーンへの動向

現在、すでに多くの世界的企業はロジスティクス分野へのブロックチェーン導入に高い関心を示し、実用化を試みています。

以下では、国際的な動向をいくつか紹介します。

オーストラリア海運業界向けコンソーシアム

ロジスティクス・ブロックチェーン・コンソーシアム(The logistic blockchain consortium)は、オーストラリアの海運業界向けに設立されました。

現在、同コンソーシアムはEYが管理しており、メンバーにはLKWウォルター・DBシェンカー・BVL・WUヴィエンヌ・その他標準化団体やデジタル子会社等が含まれます。

コンソーシアムの目的は、貨物に関するすべての書類(原産地証明書や委託状など)をデジタル化することで、商品や運送状況についての情報管理を効率化することにあります。

これにより、企業は年間約7,500万ものプロセスを自動化することが可能となり、約1,200万枚の書類を節約できるとされています。

500以上の企業が集う世界最大級アライアンス

2017年8月に設立された Transport Alliance(BiTA) は、ロジスティクス及びその他の関連業界におけるブロックチェーン技術の採用促進を目標としています。

近年、同組織は急速に成長を遂げ、世界最大の商業用ブロックチェーンアライアンスとなりました。

25か国以上の国々と500近くの企業等が集まり年間1兆ドルを超える収益を生み出しているBiTAは、本社をアメリカのテネシー州に構えています。

このアライアンスの活動の一つとして、ブロックチェーンを用いた承認プロセス基準の策定を行っています。

まとめ

スマートフォンやパソコンが幅広く普及し、オンラインショッピングやネット上での取引が主流となりつつある昨今、ロジスティクスは私たちの生活に欠かせない存在です。さらに、ロジスティクス業界は世界中で多くの人々が関わる分野でもあるため、課題解決に向けて、多方面からの注目も集めています。

既にいくつかの事例が見受けられるように、 ロジスティクス業界に対しブロックチェーン波は既に来ています。国外ではより早い段階で、ブロックチェーン利用がスタンダードになるでしょう。

海外の事例が先行しているのを鑑みると、ソフトウェア産業で日本が大きく遅れた時と同じことが、ブロックチェーンでも起こっているのかもしれません。しかしながら、海外の事例に後押しされ、日本でもこれから事例が増えていくと思われます。

事実、既に水面下でブロックチェーンのPoCを行っている日本企業は数多くあり、遠くない未来、革新的なサービスとして世の中に登場すると予想されます。

こうした事態を踏まえ、当メディアを運営する株式会社digglueでは、AIやブロックチェーンを活用した企業様を支援するサービス(コンサルティング及び教育事業)を行っております。

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