建築・建設業界でブロックチェーンは活用できるのか?導入のメリットと事例を紹介

建築・建設業界でブロックチェーンは活用できるのか?導入のメリットと事例を紹介

はじめに

建築・建設業界においてもブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用できそうなポイントがいくつかあります。

例えば、建築物を建設するためには、多くの業者が情報共有をしながらプロジェクトを進めなければなりません。また、建材の調達プロセスの効率化には、サプライチェーン管理のデジタル化と迅速な情報共有が必要です。建材の品質チェックの記録を改ざんできない形で残しておくことも重要でしょう。

多くの関係者での情報共有を行い、建材などのデータの改ざんを防止する手段として、ブロックチェーンは有用なのです。そこで本記事では、建築・建設業界においてブロックチェーンがどのように活用できるのかを、事例と共に紹介していきます。

建築・建設業界でブロックチェーンを導入するメリット

建築・建設業界においてブロックチェーンは、監査証跡システムや情報共有の効率化、建材のサプライチェーン管理、建築物の工事履歴の管理などに役立つと考えられています。

記事後半では、これらメリットを活かした事例やPoCを紹介していますが、その前にまずは、建築・建設業界の特徴とブロックチェーンを導入するメリットを簡単に整理しておきましょう。

建築・建設業界の特徴と課題

当メディアではこれまで、製造業サプライチェーンなどにおけるブロックチェーンの活用事例を紹介してきました。これらの業界のように建築・建設業もまた、ひとつのプロジェクトに多くの事業者が参加する業界です。

現場に多くの業者が出入りするのは、建築・建設業の特徴である重層下請構造に起因します。建設工事は発注によって規模や設計が異なるため、様々な専門工事に対応できる人材を企業内部で抱えるよりも、基礎や内装、外構、電気といった各工事に特化した協力会社に外注する方が合理的なのです。

一方で、このような構造であるがゆえに、情報共有の非効率性や施工責任の不明確化、コストの増大といった課題を抱えています。また、元請け企業は発注者からの支払いを受ける前に下請け企業に工事代金を支払うケースが多く、キャッシュフロー管理も重要です。

ブロックチェーン導入のメリット

ブロックチェーンは異なる主体間で改ざん耐性のあるデータを共有できるため、建築・建設業界のように多くの関係者が協業する場面での導入は効果的だといえるでしょう。改ざん困難なデータは監査証跡としても役立ちます。

建築・建設業界におけるブロックチェーン導入の主なメリットを列挙すると、以下のようになります。

  • IoTと連携した、建材などのサプライチェーン管理
  • BIMと連携した、改ざん耐性のあるデータ管理・連携
  • スマートコントラクトによる処理の自動化、支払いの強制執行

なお、「BIM」(Building Information Modeling)は、建築物の3Dモデルを軸に、関係者間でプロジェクトに関するデータを共有するソフトウェアです。建材の情報などをブロックチェーンで管理し、BIMと統合することで、最終的にはサプライチェーンの上流から決済、竣工後のメンテナンス情報までを、共通の基盤で管理できるようになると期待されています。

建築物の工事記録を改ざん困難な形で示せれば、監査証跡としても有用でしょう。その他にも、支払い用のトークンを使うことで、様々な法令を遵守しながら代金や給与の支払いを自動化できる可能性があります。

建築・建設業界×ブロックチェーンの事例紹介

それでは、建築・建設業界におけるブロックチェーンの活用事例を紹介していきましょう。

サプライチェーン管理

まず、建築・建設業界の企業がサプライチェーン管理でブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用している事例を紹介しましょう。

タイの複合企業であり、東南アジア最大のセメント・建材企業「Siam Cement Group」(SCG)は、Cordaベースのソリューション「B2P for Procure-to-Pay」を活用し、建材などの調達プロセスを効率化させています。B2Pは、サプライチェーン管理と調達から支払いまでを一括して、Cordaベースのシステムで行うことで、効率化を図るソリューションです。

B2P上で貿易に必要な書類のやり取りや、既存のERPシステムとの統合、発注から決済までのステータス管理などを行うことで、調達プロセスが合理化された結果、SCG社は調達の時間を50%削減できたと発表されています。

また、「テンセント」(腾讯)が開発・提供しているBaaS上では、規制当局の監督強化を目的として、コンクリートの品質を追跡するシステム「Tencent Cloud Micro-Concrete Blockchain Platform」が運用されています。

コンクリートは建築物の重要な建材のひとつであり、その品質管理には細心の注意を払わなければなりません。こうした背景から、テンセントと深セン市・宝安区の住宅都市再生局はプラットフォームを共同開発し、コンクリートの品質管理と検証可能性を担保しています。

その他にも、オーストラリアの大手建設会社「Probuild」は、建設業界に特化したソフトウェア企業「Briq」(旧社名:Brickschain)と共に、建材をサプライチェーン上でリアルタイムに追跡するサービスを提供しています。なお、Briqの開発したプロダクトは、Hyperledger Fabricベースです。

建物の詳細は改修時などに参照可能

建築物に使われている建材や部品の詳細をブロックチェーンを導入して管理することで、将来的に行われる建物のリフォームや補償を受ける際、あるいは売却するときに情報共有をスムーズに行うことができます。

建物の所有者は各部屋を構成する資材や機器に関する詳細にアクセスできるため、トラブルが発生した際にはサプライヤーに問い合わせることができるのです。当然ながら、ブロックチェーンが動き続ける限り、修繕や売却の記録もログとして残ります。

なお、前述したProbuildとBriqのプロジェクトにおいても、ブロックチェーンが建物のメンテナンス履歴としても使われているようです。

BIMと連携したデータの検証

BIMで共有される建物のファイルや3Dモデルなどのハッシュをブロックチェーンに記録することで、改ざん困難なログとして利用することができます。

フランスのスタートアップ「Lutecium SAS」が、代表的なBIMである「ArchiCAD」や「Revit」のプラグインとして開発する「BIMCHAIN」は、電子署名付きデータファイルのハッシュをパブリックチェーンのEthereumに書き込むプロダクトです。BIMCHAINによって関係者間で共有されたファイルが正当な人物によって作成され、改ざんされていないことを検証することができます。

また、「UCL」(University College London)とBIM大手の「Autodesk」や「Bentley」、エンタープライズ向けブロックチェーンを開発する「Hyperledger」などがメンバーとして参画する産学連携コンソーシアム「Construction Blockchain Consortium」(CBC)では、ブロックチェーンやBIM、IoT、機械学習といったテクノロジーを建築・建設業界で活用するための研究・実証実験を進めています。具体的な内容は公開されていませんが、「R3 Corda」や「IBM」とも協力しながら実証実験を行っているようです。

現場の労働者のID&ライセンス管理

建設現場の労働者のIDや資格情報、労働時間の管理にブロックチェーンを活用するアプローチも見られます。スイスのブロックチェーン企業「Linum Labs」と「スイス連邦鉄道」(SBB)が2018年11月に完了した実証実験では、分散型のデジタルIDアプリケーション「uPort」とEthereumを活用し、鉄道建設の労働者のライセンス情報を適切に管理できるかが検証されました。

uPortのIDに資格情報を紐付ける際には、証明書が会社から発行され、労働者のスマホアプリに保存されます。建設現場では仕事を始める時と退勤する時に、スマホアプリでQRコードを読み込み、現場で適切な資格を持った労働者が働いていることを労働時間とともに記録・証明することができます。これらの情報のハッシュはパブリックチェーンのEthereumに書き込まれますが、個人情報や証明書などはオフチェーンで管理されているため、プライバシーが侵害されることはありません。

Linum Labsとスイス連邦鉄道の取り組みは実証実験であるため、現時点で現場に取り入れられている訳ではありませんが、多くの労働者が出入りする現場の管理や信頼性の高い記録として使える可能性を示しています。

まとめ

建築・建設業界においてもブロックチェーンの活用が少しずつ進んでおり、本記事で紹介したように、サプライチェーン管理や建材の品質管理(検証)などに活用されはじめています。

また、BIMやIoTなどの技術とブロックチェーンを組み合わせることで、現場の再現や事後の検証に使える信頼性の高いデータを残しておくことが可能です。

多くの事業者が関わる業界だからこそ、ブロックチェーン活用の余地はあるといえるでしょう。

参考資料
第1回:建設業の概要|建設業|EY新日本有限責任監査法人
BLOCKCHAIN TECHNOLOGY IN THE CONSTRUCTION INDUSTRY(Institution of Civil Engineers)
R3’s blockchain technology tightens SCG procurement(bangkokpost)
区块链助力智能建造,腾讯云发布全球首个混凝土区块链平台(QQ.com)
Blockchain In Real Estate Use Case #9: Briq(disruptordaily)
CBC(Webサイト)
Swiss Federal Railway Trials First Digital Identity Pilot on Ethereum

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