【特別インタビュー:後編】ZEROBILLBANK CEO 堀口 純一 氏

【特別インタビュー:後編】ZEROBILLBANK CEO 堀口 純一 氏

ブロックチェーン業界で活躍するプレイヤーにスポットライトを当てる特別インタビューシリーズ、第3弾は ZEROBILLBANK CEO 堀口純一 氏!

ここからインタビュー後編に入ります。
 

インタビュー:後編

コンソーシアムについて

 
コンソーシアム型の事業を作ろうとした場合、合意形成など難しいポイントがいくつかあると思いますが、企業はどのような点に注意して事業開発を進めればよいでしょうか。
 

また難しいご質問を(笑)

弊社では最近「未来新聞」と銘打って、この企業と、この企業の、このアセットを、こうのようにつなぎ合わせると、こんな感じの新規事業ができるのではないか?という未来のプレスリリースを最初につくり、提案活動を行っております。既存事業とは異なる非線形の未来を描いたうえで、バックキャスティングしてプレイヤーを選ぶようにしております。

もちろん既存の業務をブロックチェーンで置き換えていくというのも重要ですが、そうなると既得権益とバッティングしてしまうこともあり、合意形成が難しくなります。そうではなくて、参加する企業にとってお互いにWin-Winになるような未来を描いたうえで、その中にブロックチェーンを使ったデータ連携を置くと良いのではないかと考えております。

例えば、関わっている企業がどんな課題を抱えているか、お付き合いをしていく中でだんだん見えてくるとします。その見えてきた課題に対し、他社の持っているアセットと繋ぎながら、こんな役割分担ならうまくいくのではないか、とキャスティングします。そして未来新聞としてプレスリリースを書いてしまい、各社に提案を持っていくと、事業がスムーズに進み初めてきます。これって合意形成ですよね。

テクノロジーの進歩により、境界線というボーダーラインがあいまいになり、変わっていくような世の中において、ワクワクするようなキャスティングをして演劇をつくる、いわゆるエンタープライズ・コンソーシアム劇場の脚本家ような役割でありたいという思いから、弊社では最近ミッションを更新し「ボーダブル・シアター(BORDERABLE THEATER)」という言葉を使い始めました。互いが譲歩しあうような合意形成ではなく、未来志向の合意形成のほうが早く進む、これがボーダブル・シアター(BORDERABLE THEATER)で考えるコンソーシアムの形です。
  

 
コンソーシアム型の事業を作る場合、単なる共有DBではなくブロックチェーンだからこそ実現できるメリットは何だとお考えでしょうか?
 

神戸市さんのコンペで賞を頂いた内容で、情報銀行とスマートコントラクトによる健康エコシステムを構築する例を元にお話します。

実際に行った何かしらの健康活動や健康情報を、当事者だけではなく家族で共有し、活動に基づいたインセンティブを家族に付与する、そしてそれらに基づく解像度の高いデータを企業や団体が生かして良いサイクルを作る、というものです。

例えば、祖父が1万歩を歩き、健康活動を通して得たインセンティブを、自身ではなく孫に付与します。「健康」というスキームで考えた場合、自分のためではなく、身近な第三者に利益還元される、といった方がモチベーションを高く保つことができますし、健康データも祖父自身ではなく息子や娘などが把握しておくことも重要になってきます。

それらの健康活動により、助成金でまかなわれていた医療費を削減でき、削減した費用の一部をインセンティブとして還元する、といったエコシステムを考えました。

裏側で得られた解像度の高いデータは、保険、創薬、医療研究、病院、自治体など複数の企業や団体で活用されるのですが、このように非常に多くのエンティティが入ってきたときに、本当に実装できるのでしょうか。

ブロックチェーン基盤を利用しスマートコントラクトで「健康全部証明書」を発行します。それを元にオプションを発行すれば、各社が別々のデータベース(行政の手続き、保険のオファー、未病のデータ、認知症の方の行動予測など)を持ちながら、それぞれが改ざんできない仕組みを持つ事が可能だと考えました。

そう考えた場合、共有データベースを作るという概念ではなくて、自社の持っているDBは正しく、なおかつ今までと同じ管理方法を取ることがブロックチェーンなら実現可能と考えました。

ただ単に既存のデータベースのまま複数社とデータを連携しようとすると、N対Nのやり取りが発生してしまいます。1社がデータを変えたら他社にデータ変更を伝播できるような仕組みをブロックチェーンで作れば、こういったやり取りも実現可能です。

これが、共有データベースではなくブロックチェーンだからこそ出せる圧倒的なメリットだと思います。

<参考>
ヘルスケアビジコン in KOBE

ブロックチェーンの将来

 
パブリックとコンソーシアムのそれぞれで、ブロックチェーン業界で伸びていくであろう分野はどこだと思いますか?例えばNFTのゲーム領域や、STO、監査等、SCMなど。
 

データは水や電気のように公共性が高くなっていくと思っています。

Netflixに「グレート・ハック: SNS史上最悪のスキャンダル」という、GDPR(一般データ保護規則)ができた経緯を撮ったキュメンタリー映画があるのですが、自分のデータがどこでどのように使われているのかわからなくなっており、政治や民衆心理などに使用されてしまっている状況が描かれています。

ブロックチェーンは、データを自身がハンドリングしていく基盤と考えており、これからもっと伸びていくと考えています。

  

 
近年、ようやくブロックチェーンを利用したサービスが増えてきましたが、まだまだPoCどまりの案件が多いのも事実だと思います。この先、PoCではなく、サービスとしてブロックチェーンが普及するには、何が必要だと思いますか?
 

我々はブロックチェーンの導入を4フェーズに分けています。

  • フェーズ1:技術検証(PoC)
  • フェーズ2:ビジネス検証
  • フェーズ3:非機能要件
  • フェーズ4:サービス化

フェーズ1:技術検証(PoC)

技術検証はアイデアが「実現可能かどうか」というフェーズで、これに関してはすでに各社も色々とやってきたと思います。BaaSやクラウドを使いながら、既に終えている企業も多い印象です。

フェーズ2:ビジネス検証

最近は「本当に儲かるのかを検証する」ビジネス検証をやっているところが増えてきました。我々はオセロの四隅を抑えるように、キーとなるプレイヤーとビジネスの座組の中でのユースケースでがっちり押さえます。

フェーズ3:非機能要件

これならばスケールする、というのが見えてきた中で、実際に社会実装していくために非機能要件を実装していきます。これは「可用性」、「拡張性」、「冗長性」、「移行性」、「セキュリティ」等を担保できるよう実装していきます。

フェーズ4:サービス化

そして最後にサービスとして事業を行っていきます。
現在我々がメインで行っているのが、フェーズ2とフェーズ3になります。

貴社の将来(ビジョン)

 
将来的にはどういったポジションを取ろうと考えていますか?
 

キャスティングのポジションです。先ほども少し触れましたが、ミッションである「ボーダブルシアター(BORDERABLE THEATER)」における、「人・企業・技術」をどのように配置しディレクションしていこうかを考える、劇場におけるキャスティングのポジションを取っていきたいと考えています。

 
今後、ブロックチェーンを導入したいと考えるユーザー企業様に向けてコメントがあればお願いします。
 

イノベーション関数を一緒に作りましょう!ヒト・モノ・カネ・情報のN乗が大きければ大きいほどワクワクできます。これを皆さんと一緒に作りたいと思っています。

 
ありがとうございました。

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