Cordaを推進する「R3コンソーシアム」とは?その目的や取り組みを解説

Cordaを推進する「R3コンソーシアム」とは?その目的や取り組みを解説

はじめに

エンタープライズ向けブロックチェーン(分散型台帳)のプラットフォームとして、「Hyperledger」や「Corda」、「Quorum」は有力な選択肢となります。その中でCordaは、コンソーシアムのメンバー間で同じ内容の台帳を共有せず、知る必要のある範囲で情報共有を行うように設計されている点が特徴的です。

直接取引を行う当事者間でのみ情報共有を行うモデルになっている背景には、Cordaに関する開発や研究を行う組織「R3コンソーシアム」の設立された経緯が関係しています。そこで今回は、その背景も踏まえつつ、R3コンソーシアムの概要や取り組みについて紹介していきましょう。

R3コンソーシアムとは?

R3コンソーシアムは、分散型台帳基盤であるCordaをビジネスに活用するため実証実験やプロトタイプ開発、ノウハウの共有などを行う企業連合(コンソーシアム)です。2019年11月現在、R3コンソーシアムには300以上の民間企業や公的機関が、メンバーあるいはパートナーとして参画しています。

また、「R3」(R3CEV LLC)とは、Cordaの設計・開発およびR3コンソーシアムを主導するソフトウェア企業です。R3社のグローバルチームは13ヶ国・合計180名以上の専門家で構成されており、さらに世界中に遍在する2000名を超えるテクノロジーやファイナンス、法律の専門家がチームをサポートしています(2019年5月時点)。

なお、R3社の筆頭株主は日本の金融持株会社「SBIホールディングス」となっており、国内ではSBIとR3社の合弁企業である「SBI R3 Japan」が設立されています。

分散型台帳基盤Cordaについて

Cordaは、貿易金融(トレードファイナンス)やシンジケートローン、ID、保険、ヘルスケアなど、様々な領域で活用されているプラットフォームです。改ざん耐性やスマートコントラクト、トークン生成などの機能を備えた許可型の分散台帳ネットワークを構築できます。

Cordaはトランザクションがブロック型で一括処理される訳ではないため、分散型台帳技術と呼ばれることがほとんどです。Cordaについては以下の記事をご覧ください。

  

また、Corda自体はオープンソースソフトウェアとして開発されていますが、企業向けに機能が調整された商用ディストリビューション「Corda Enterprise」も提供されています。Corda Enterpriseの概要は以下の公式資料が参考になります。

参考:Meet Corda Enterprise Fine-tuned for the enterprise

R3コンソーシアムの目的とは?

R3コンソーシアムは、金融取引へのブロックチェーンの応用可能性を探るため、2015年9月に9社の金融機関が集まって設立されました。当初はCordaのような新しいプラットフォームを設計する予定は無かったようです。

しかし、イーサリアムを活用した実証実験の結果、プライバシー制御やスループット(単位時間当たりの処理能力)などが金融取引の要件を満たさなかったため、新しいプラットフォームの開発がスタートしました。

その後、様々な検討と改善を経て、Cordaは取引の当事者のみが情報を共有するモデルとなっています。

R3コンソーシアムの参加企業

2015年12月には、R3コンソーシアムは金融機関42社が参画するコミュニティへと成長し、メンバーには「バークレイズ」や「BBVA」「バンク・オブ・アメリカ」「INGグループ」などが名を連ねました。また、日本からは「三菱UFJフィナンシャル・グループ」や「みずほフィナンシャル・グループ」などが参加しています。

参考:みずほFG、MUFGに続きR3ブロックチェーン・コンソーシアムに参加表明

2016年11月にはオープンソースソフトウェアとしてのCordaが公開されました。その後、R3コンソーシアムは、研究開発の進展やメンバーの増加と共に、金融機関で構成されたコンソーシアムから非金融領域のメンバーも参加する300社以上のコミュニティへと発展しています。

参考:History

当初、R3コンソーシアムの目的は金融領域での分散型台帳技術の応用可能性を研究することでした。しかし現在では、Cordaをより広い事業領域で活用するために、様々な研究開発やプロジェクトの推進・サポートなどを行うコミュニティへと発展しています。

R3コンソーシアムの取り組みとは?

R3コンソーシアムの取り組みはR3社と重複する部分も多いですが、総じてCordaの改善と普及、Cordaを本番環境で運用しやすくするための環境づくりがメインとなっています。いくつか紹介していきましょう。
  

ユースケースやノウハウ、課題を共有するコミュニティサポート

R3コンソーシアムの大きな強みは、ブロックチェーン・分散型台帳の業界における世界有数のグローバルコミュニティであることです。実績のある技術者が多く参加するコミュニティからのサポートを受けられる場が、SlackやStackOverflow、メーリングリストなどで提供されています。

参考:Developer community

また、Cordaを活用する組織やネットワーク、事例を共有するためのマーケットプレイスも用意されており、コンソーシアムメンバーであれば他の参加者との協働や自社のソリューション事例の共有も可能です(交渉や審査は必要)。

参考:Welcome to Marketplace

CorDappsの開発者育成プログラム

R3社の主導で「CorDapps」(Cordaで開発されるアプリケーション)を開発するためのトレーニングプログラムが提供されています。まず、エンジニア向けのプログラム「Corda Developer Training」では、セキュリティやネットワーク設計、Cordaのアーキテクチャーといった必要な知識を2日間で習得可能です。

また、CorDapps開発に必要な知識の理解度を確認するための「Corda Developer Certification Exam」というテストも用意されており、合格者には証明書が発行されます。

その他にも、初心者向けにオフラインのハンズオントレーニング「Corda Bootcamps」が開催されており、CorDappを開発する方法を手を動かしながら1日で学ぶことができます。

参考:Training + certification

法曹界で分散型台帳技術に精通した人材育成を支援

  

分散型台帳技術は新しい概念であるため、CorDappsを開発し、商用ベースに乗せる際には法的課題を整理し、検討する必要があります。しかし、技術と法律に明るい人材はそう多くありません。

そこで、事業開発においてハードルとなり得る法律面の課題をクリアするために、法律事務所10社と協力して、ブロックチェーン・分散型台帳技術に精通した法律家を育成するプラットフォーム「Legal Centre of Excellence」(LCoE)が2018年に設立されました。

LCoEではブロックチェーンやCordaに関する弁護士向けのワークショップなどを提供することで、彼ら・彼女らがクライアントに対して、技術と規制動向を踏まえた適格なアドバイスができるようにサポートしています。

参考:R3 Launches Corda Blockchain Center of Excellence to Collaborate with Law Firms

まとめ:Cordaの普及を推進するR3コンソーシアム

本記事でも紹介したように、R3コンソーシアムはR3社を中心として、Cordaの開発や研究、CorDappsの開発を支援する環境づくりを行っているコミュニティです。設立当初は金融取引への分散型台帳技術の応用を研究することを主眼としていましたが、現在では領域を問わず様々なユースケースをサポートしています。

知見の共有や専門人材の育成のための仕組みづくりなどを行うR3コンソーシアムが、今後も多くの企業や公的機関を巻き込んでいくことで、CorDappsのユースケースは増えていくでしょう。そうなれば、ネットワーク効果がより強力に働きます。

なお、2019年10月にはMicrosoft Azureが、Corda Enterpriseに対応するアップデートを実施しており、CorDappsを開発するためのより良い環境が整備されつつある点も見逃せません。アップデート概要は以下の記事でまとめていますので、興味のある方は是非ご覧ください。

  

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