インターオペラビリティ(相互運用性)とは?CosmosとPolkadotの違いを詳しく解説

インターオペラビリティ(相互運用性)とは?CosmosとPolkadotの違いを詳しく解説

2019年に入り、ブロックチェーンの「インターオペラビリティ(相互運用性)」に関する話題が増えてきました。本記事では、インターオペラビリティと注目プロジェクトである「Cosmos(コスモス)」と「Polkadot(ポルカドット)」について解説していきます。

インターオペラビリティとは?

インターオペラビリティとは、複数の異なるシステムを組み合わせて、相互運用できる状態のことです。

2019年9月時点では、基本的に異なるブロックチェーン同士は互換性がありません。目的に応じてブロックチェーンを使い分けなければならず、開発者・ユーザー双方にとって不便な状況なのです。

注目プロジェクト:CosmosとPolkadot

CosmosとPolkadotは、ブロックチェーンにおけるインターオペラビリティの実現を目指す注目プロジェクトです。

パブリック、プライベート、コンソーシアムチェーンといった種類に関係なく(パーミッションの有無に関係なく)、互換性あるネットワークを構築できるため、ビジネスサイドとしても注目に値するプロジェクトだと言えるでしょう。

例えば、KYC(顧客の本人確認)に特化したパブリックチェーンを構築し、そのKYC情報をセキュリティトークン(証券型トークン)が流通するコンソーシアムチェーンで利用するといった活用法が考えられます。

なお、ブロックチェーン(分散台帳)を活用したKYCについては、過去にまとめています。
  

  
それでは、CosmosとPolkadotの概要を解説した上で、両者の違いを整理していきましょう。

Cosmosとは?

Cosmosはアメリカに拠点を置く「Tendermint Inc.」によって開発されており、既にメインネットにローンチされています。

Cosmosの仕組み(Hub、Zone、Peg-Zone)

Cosmosはブロックチェーンの集合体(ネットワーク)です。以下の「Hub」「Zone」はいずれも独立したブロックチェーンであり、Zone同士のトークンのやり取りを中継するのがHubの役割です。また、トランザクションやブロックのバリデーション(検証)は各チェーンで独立して行われています。
  

https://cosmos.network/intro

最初にローンチされたHubは「Cosmos Hub」と呼ばれています。また、以下のようにHub同士の接続も可能です。
  

https://cosmos.network/intro

さらに、「Peg-Zone」という仕組みによって、外部のブロックチェーンの状態を追跡し、Cosmosの内外でトークンの送受信をすることもできます。

https://cosmos.network/intro

独自ブロックチェーンの開発キットCosmos SDK

Cosmosでは、コンセンサス層とネットワーク層をパッケージ化したソフトウェア「Tendermint BFT」が提供されており、低レイヤーの開発に時間を割かなくても新しいブロックチェーンを構築可能です。そして、Tendermint BFT上に安全なアプリケーションを構築するためのフレームワークとして「Cosmos SDK」が提供されています。なお、Tendermint BFTでは、各ブロックごとにファイナライズ(確定)されます。

https://cosmos.network/intro

【参考】各層の説明

  • アプリケーション層:トランザクションをトリガーとして状態を記録、更新する
  • コンセンサス層:各ノードが新しいブロック(最新の状態)について合意する
  • ネットワーク層:トランザクションおよびコンセンサス関連の情報の伝播する

Polkadotとは?

Cosmosと同様に、Polkadotもインターオペラビリティを実現するプロジェクトであり、「Web3 Foundation」によって主導されています。

Polkadotの仕組み(Relaychain、Parachain、Bridgechain)

Polkadotでのチェーン間のやり取りは、Cosmosと似た構造になっています。以下はPolkadotの全体像を示した図です。
  

https://polkadot.network/Polkadot-lightpaper.pdf

異なるチェーン同士のデータ転送を仲介しているのが、中心に位置する「Relaychain」です。Relaychainに接続されている「Parachain」は、アプリケーションごとに構築される個別のブロックチェーンであり、アプリに応じて最適化された独自のアーキテクチャを備えています。

また、ネットワーク外のブロックチェーンと接続する場合には「Bridgechain」と呼ばれる特殊なParachainが用いられます。以下はBridgechainによって、Polkadotとイーサリアムが接続された時のイメージです。
  

Parachainの最終的な状態はRelaychainで確定する

Polkadotでは、各Parachainの状態(ブロック)がRelaychainへと送られて検証された後、ファイナライズされます。ParachainはRelaychainに接続されることが前提となっているのです。この点は各チェーンが独立しており、接続するHubを任意で選択することが前提のCosmosと大きく異なります。

より詳しくPolkadotについて知りたい方は、まずライトペーパーを読むと良いでしょう。

参考:Polkadot Lightpaper

ブロックチェーン開発フレームワークSubstrate

「Substrate」は低レイヤーを意識せずに、独自のブロックチェーンを開発できるフレームワークです。位置付けとしては、CosmosにおけるCosmos SDKのようなものですが、開発はWeb3 Foundationではなく「Parity Technologies」によって行われています。

Substrateを用いることで、ハードフォークせずにコンセンサスアルゴリズムなどの仕様を変更できます。

CosmosとPolkadotの違いとは?

CosmosもPolkadotの違いを簡単に紹介していきましょう。

やり取りされるデータの種類

Cosmosでは異なるチェーンへと転送されるデータは、トークンに限られています。一方で、Polkadotはあらゆる種類のデータを転送可能です(メッセージやアイデンティティなど)。

セキュリティモデル

Cosmosでは各ブロックチェーン(Zone、Hub)のセキュリティが個別のチェーンに委ねられています。異なるチェーンにトークンを転送する場合には、転送先のチェーンのセキュリティが十分に強固でなければなりません。セキュリティが低いと、二重支払いなどの不正が生じやすく、トークンの転送が不成立になるなどのリスクがあります。

一方でPolkadotでは、すべてのParachainが、接続先であるRelaychainのセキュリティを享受できます。Parachainの開発者はセキュリティ以外のことに集中できますが、Relaychainに深刻な障害や脆弱性が生じた場合、全体に影響が及ぶリスクは認識する必要があるでしょう。

CosmosとPolkadotは、他にもコンセンサスアルゴリズムやファイナライズのプロセス、ネイティブトークンによるガバナンスモデルなど、様々な相違点があります。より網羅的な違いは、以下の記事でまとめられています。

参考:Polkadot vs. Cosmos: Design Comparison

果たしてCosmosとPolkadotは競合なのか?

CosmosとPolkadotは競合関係と捉えることもできますが、BridgechainによってCosmosとPolkadotを繋ぐことができるので、将来的に両者は共存し、相乗効果を発揮する可能性は十分にあります。

【まとめ】技術トレンドとしてインターオペラビリティは要注目

本記事ではインターオペラビリティの概要と注目されているプロジェクトとしてCosmosとPolkadotを紹介しました。

Cosmos SDKやSubstrateといった共通のフレームワークを用いたブロックチェーンによるインターオペラビリティが実現すると、異なるブロックチェーン間でのデータの送受信や、低レイヤーに依存しない柔軟な開発ができるようになります。さらに、パーミッションの有無に関係なく互換性を担保できるため、ブロックチェーンの応用範囲は広がっていく可能性が高いです。

ビジネスサイドから見ても、インターオペラビリティは注目すべき技術トレンドであり、特にCosmosやPolkadotは要注目だと言えるでしょう。

ブロックチェーンカテゴリの最新記事