マイクロソフトのブロックチェーン取り組み徹底解説

マイクロソフトのブロックチェーン取り組み徹底解説

はじめに

先日、日本マイクロソフト社によるメディアラウンドが行われ、廣瀬氏・原氏が登壇しどんな取り組みをしているのかをメディア向けに解説するイベントがありました。メディアラウンドの資料を基に、マイクロソフトの取組を解説いたします。

また、スタートアップエコシステムに関する部分をまとめた記事がありますので、下記を参考にしてください。
  

ブロックチェーンの概要

「ブロックチェーンとは何か」については、色々なところで説明されているので、メディアラウンドにて説明された内容を元に簡略化&補足して解説します。

市場

下記の経産省資料によるとブロックチェーン技術の展開が見込まれる市場は67兆円、との試算が出ており長期にわたって大きく成長していくものと考えられています。

平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料

これはブロックチェーンが適応可能な領域が非常に広いため、このような算出になっているものと思われますが、実際にガートナーの調査では2030年までに100兆円規模を超える経済効果をもたらす、とあります。
  

Gartner: Blockchain Will Deliver $3.1 Trillion Dollars in Value by 2030.

定義・特徴

ブロックチェーンは、電子署名、P2P、合意形成アルゴリズムなどの要素を組み合わせた分散型台帳で「複数の企業や個人の間で真正性のある共有場所を設ける技術」と定義されています。台帳はネットワークの合意を以てのみ更新され、他の参加者が知らずに削除されたり更新されたりすることがありません。

どんなことができ、何の役に立つのか

「データベース領域においての信頼性の担保」とも言われますが、エンタープライズ利用の場合は「異業種、同業種参加企業間のビジネスプロセスを自動化」が可能になります。
  

もう少し詳しく言うと、以下のケースにおいて役に立ちます。

・異なる企業にまたがったビジネスプロセスを行う場合
 例)トレーサビリティ

・複数企業が協力して一つのデータを更新する場合
 例)トレードファイナンス

・信頼できる1つの情報源を中継する場合
 例)証券取引

・低価値の手作業のデータを検証する場合
 例)カーボンコピーや伝票の再入力によるデジタルトランスフォーメーション

ユースケース

画像にあるように、適用できる業界は多岐にわたります。
  

ここに書いてあるものが全てではなく、例えば公共機関の交通網の適用であったり、エネルギーの個人間取引であったり、電子上でのデータの取引が行われる領域において応用が利きます。もっと詳しいユースケースについては、下記の記事を参考にしてください。
  

マイクロソフトのブロックチェーンへの取り組み

バックグラウンド

国内でのブロックチェーンの認知は、古くは2014年のマウントゴックス事件、もしくは2017年のビットコインを始めとした暗号資産の高騰によって一気に浸透しました。しかし多くの人にとっては、 ブロックチェーン=暗号資産という「通貨としての側面」のみの理解に留まり、数々の流出事件を経て「なんとなく危険なもの」という認知が広がってしまいました。

グローバルに目を向けると、多くの企業が「技術の側面」でビジネス転用を行い、数多くの実証実験を経て、現在では実際の運用に漕ぎつけるケースも増えてきました。

マイクロソフトは、国内の認知が高まる前の2015年から「技術の側面」に注目し、数々のパートナー企業と組んで、クラウドベンダーの中では早い時期からブロックチェーンへ取り組んできました。

取り組み①:ブロックチェーンインフラの導入と支援

本サイトでも度々紹介しているAzure Blockchain Serviceを始めとしたBlockchain as a Service(BaaS)は、マイクロソフトが特に力を入れている分野です。BaaS利用でクラウドと連携したブロックチェーンの構築が可能になり、ローカルで展開するよりも「楽に」「素早く」構築できるようになるのが特徴です。

2019年5月にローンチしたAzure Blockchain Service は、世界で最大級のリージョン数とネットワークを誇ります。コンソーシアムのネットワーク構築においてはここはかなり重要な指標になります。
  


Azure Blockchain Serviceについては、以下の記事で詳しくレポートしています。

de:code 2019 レポート➁ – Blockchain as a Service 最新情報と新サービスにおけるブロックチェーン アプリ開発手法


開発者向けのツールとして、 Azure Blockchain Development Kitを提供しているのも特徴の一つです。

Azure Blockchain Development Kitで簡単にブロックチェーンネットワークを構築してみた


Azure Blockchain Serviceとは別に、Azure Blockchain Workbenchというサービスも展開しています。こちらの詳細は以下をご覧ください。

Azure Blockchain Workbenchで何ができるの?事例とメリット

Azure Blockchain Workbenchの設定方法を解説する!

SCM×ブロックチェーンをAzure Blockchain Workbenchで実装!デモアプリケーションの紹介

取り組み②: Blockchainに適した活用シナリオの啓蒙

今回のメディアラウンドもそうですが、Azureの使い方や、ブロックチェーンがどのような領域に適していて、具体的にどのように活用されているかの啓蒙を行っています。

例えば、英語のコンテンツにはなりますが、”Block Talk“という動画チャンネルでブロックチェーンのディープな技術に触れるディスカッションや解説などを行っています。一例として、Azure Blockchain Serviceでの具体的な構築方法を紹介した動画を貼っておきます。
  

Block Talkの動画一覧はこちら
  

  
  
国内では、主にインフルエンサーとして、デプロイ王子こと廣瀬一海氏を筆頭に、イベント・インタビュー・動画などを通じて発信しています。
  

  
上記、スライドの中にあるスターバックスの事例については下記を参考にしてください。
  

取り組み③: 迅速なPoC環境と技術支援の提供

Azure Blockchain Serviceなどの他に、Azure Market Placeを見てみると実に多くのブロックチェーンテンプレートを見つけることができます。
  

取り組み④:パートナーシップ

上記のテンプレートの多くはパートナー企業と連携したもので、Ethereumのようなメジャーなものから、Wavesのようなちょっとマイナーなものまでカバーしています。
  

 
上記のマーケットプレイスの他にも、例えばブロックチェーン界でも大きく成長したConsenSysと、古くは2015年から、新しいものであれば「ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMH)の高級ブランド真正品証明」などでもパートナーシップを組んでプロジェクトに取り組んでいます。
    

  
また、冒頭でも簡単に紹介しましたが、スタートアップ支援の一環として様々なブロックチェーン・スタートアップ企業と連携してプロジェクトや啓蒙を進めています。
  

  
近年のこういった活動がブロックチェーンの普及に大きく貢献しているのは間違いないでしょう。

さいごに

以上がマイクロソフトによるブロックチェーンの取り組みまとめになります。

世界的な大手企業とスタートアップが積極的な活動をしていくことによって、徐々にブロックチェーンの活用が浸透していってるのを実感しています。

ブロックチェーンの一般普及は時間はかかるものの 、こういったユースケースの積み重ねの延長上にあり、気が付いたら周りの多くのサービスがブロックチェーンを使っていた、なんてことになるのかもしれませんね。

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