【特別インタビュー】LayerX CTO 榎本 悠介 氏

【特別インタビュー】LayerX CTO 榎本 悠介 氏

ブロックチェーン業界で活躍するプレイヤーにスポットライトを当てる特別インタビューシリーズ、第1弾はLayerX CTOの榎本悠介さんです!
  

LayerXとはどんな企業か

今回インタビューをさせていただいたLayerXは、 Gunosy と AnyPay のジョイントベンチャーで、ブロックチェーンに特化したR&Dやコンサルティングなどを行っている会社。国内のブロックチェーン業界のメインプレイヤーでトップを走る企業です。今回はCTOの榎本さんにお話を伺いました。

 

特別インタビュー!

サービスやブロックチェーンとの関り

さっそくですが、貴社のサービスやブロックチェーンとの関りについてご紹介お願いします!
  

LayerXはブロックチェーン領域におけるR&Dの活動と、ブロックチェーン技術を用いた事業開発を行っています。業界の中では、「研究の会社」というイメージが強いのですが、実は事業開発領域の担当は10人以上おり、ブロックチェーンのコンサルティングも行っているんです。

具体的には、ツクルバと不動産×ブロックチェーンの取り組みを行っています。また、昨年度からは、マイクロソフトとブロックチェーン領域で協業し、両社でブロックチェーン技術の普及に向けた取り組みを行っています。R&Dでは、Zerochainや次世代のコンセンサスプロトコルであるCasperCBCなどの研究をしており、海外のカンファレンスで発表するなどブロックチェーンの研究開発にも積極的です。そのほか、月一でエンジニアコミュニティの「blockchain.tokyo」といったイベントも実施しています。
  

※補足情報※

▼ 不動産の取り組み 「Cryptorealty」について
https://cryptorealtyproject.io/

▼Microsoftの取り組みについて
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000036528.html

▼Zerochainについて
Midium:秘匿化ブロックチェーン 「Zerochain」プロジェクト始動
Zerochain bi-weeklyアップデートレポート#0

▼Casper CBCについて
Medium:CBC Casperと形式的検証
論文:Refinement and Verification of CBC Casper

▼blockchain.tokyoイベント一覧
https://blockchain-tokyo.connpass.com/

ブロックチェーンの認知度

ブロックチェーンの一般的な認知がAIやIoTと比べて低い理由は何だと思いますか?
  

パブリックチェーンとコンソーシアムチェーンを2つに分けてご説明します。

パブリックチェーンはビットコインに代表されるように、管理者がいない中で誰でも参加でき、誰にも止められないサービスをつくるという、全く新しい技術から生まれた新しいパラダイムです。

一方コンソーシアムチェーンは、分散台帳を用いることでビジネスを改善していくことを目的と、 既存のエンタープライズの業務と地続きとなっています。

両者は、それぞれ目指しているものが全く違う技術だと思っています。

パブリックチェーンは、日本では仮想通貨として広まってしまっていて、ビットコインは知っているけれど裏側にあるブロックチェーンは認知されていないことが多い印象です。そのため、社会に浸透していくのには時間がかかるのではないかと考えています。一方、技術としては水面下でかなり進んでおり、わかりやすいユースケースが見えてくると普及するのではないかと考えています。

現時点でのわかりやすいユースケースのひとつは送金であり、ビットコインです。Lightning networkなどマイクロペイメントが注目されがちですが、むしろ基本的には大きな送金に向いていると思います。実際少額だと信用できない相手にも渡せますよね。海外の家族へ、銀行を介することなく仕送りできるなどはよいユースケースになると考えています。
  

ブロックチェーンの普及に必要な要素

各企業やスタートアップが、ブロックチェーン領域において、PoCではなく、
ビジネスとしてサービスを展開していくには、何が必要だと思いますか?

  

ブロックチェーンは、ネットワーク効果でメリットが享受されるので、1企業単体では効果が見えづらく、普及しづらい一つの要因となっています。コンソーシアムを組むにも、複数社またいだ調整が必要な場合が多く、他社を巻き込むことが大きなテーマになると考えています。

また各業界最大手企業が、導入メリットを感じづらいというのもあります。わざわざコンソーシアムを組まずともビジネスが回っている以上、なぜブロックチェーンを導入するのか?という問いに答えていかねばなりません。

ただし、各業界でこういった議論が積極的にされるようなダイナミズムが生まれただけでブロックチェーンの価値はあると考えています。
  
  

BaaSの選定ポイント

BaaS利用を検討する上で、企業はどういったポイントに注目して選定するべきだと思いますか?
  

他社を巻き込みやすいか否かという点で選定するとよいと思います。
単にブロックチェーンのノードを立てられるだけでなく、コンソーシアム構築をBaaSとしてマネージドできるのであれば、とても意味があります。

既存のサービスでも、単にブロックチェーンのノードが立てられるものは多くあります。しかし、BaaSとして、マネージドでAPIの口があってコンソーシアム構築支援ができるとなってくると選択肢は限られてくるのではないでしょうか。

例えば、Azure Blockchain ServiceはQuorum(クォーラム)が対応しています。相手企業に招待を飛ばしたり、実際にやってみることで、簡単にコンソーシアムを組めるところを見てもらうと、イメージを掴んでもらいやすいと感じています。

なぜAzureなのか?

Azureを選ばれたのはなぜですか?複数社ある中で、なぜMSとパートナーシップを結んだのでしょうか?
  

最近では各社とも機能を充実させる動きはありますが、当初からAzureは圧倒的に機能面が進んでいたという点にあります。

また、グローバルでの導入事例が多い点もあります。世界的なコンソーシアムプロジェクトで利用例があるのは素晴らしいですよね。

もちろんフラットに、各クラウドの動きは追っており、ユースケースによってベストな選定をしていけたらと思っています。
   

活用事例の参考:
コーヒー豆のトレーサビリティ(Starbucks)
高級ブランド品の真正品証明(LVMH – ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)

その他の事例についてはこちら:
BaaS info!! 活用事例カテゴリー

実際に使ってみてどうか?

Azureを実際に使われてみて、良かった点はどういったところにありますか?
また改善していってほしい点はどういったところにありますか?
  

Azure Blockchain Serviceにより、さくっと試せるのが良いですよね。またAzure Blockchain Workbenchでも使われている各機構は良いのではないでしょうか。ブロックチェーンだけだと使いづらい部分を裏側でトラディショナルなDBもつながっているなど。

また、我々もマイクロソフトの海外開発チームとコミュニケーションをしているのですが、開発が速く日々アップデートされているのを肌で感じています。
  

関連記事:
Microsoftのブロックチェーンクラウドサービス「Azure Blockchain Workbench」と利用例

注目する分野は?

PoC、開発、レポート、コンサル、とブロックチェーン領域において 幅広くやっている中、最も力を入れているポイントはどこですか?
  

証券化領域とR&Dですね。

事業開発と研究開発が両輪でまわっていき、理想的にはgoogleみたいに検索エンジンと機械学習といった相乗効果をなすイメージをしていて、2~3年後に業界に見晴らしのいい場所に居たいと考えています。

代表の福島も、技術から会社を創るという思いが多い。ここへの投資は惜しみません。
  

R&Dのレポートなどはこちら:LayerX Research

  

人材について

御社の文化に合う人材かどうが、が最も重視している採用ポイントになるようですが「変化を積極的に楽しみ、自ら乗り出していけるような アニマルな方」に共通するような特徴何かありますか?
  

僕も知りたいところですね(笑)

今の時点でブロックチェーンに対して強い思いを持っている人は、要件を満たしている人が多いかもしれません。自ら勉強し、海外事例をキャッチアップしている方なら、英語もできるし、自頭もよい優秀な人が多い印象です。

  
英語とスキルということでしょうか?
  

それだけでなく、マインドも重要です。僕らは細かいことを”詰める”ことは絶対にしない。逆に言うと、そういったことがなくても自立できるようなマインドを持っている人が重要です。

入社時点ではブロックチェーンに詳しい人はほとんどいないです。詳しい人はすでに業界コミットしている人ですが、業界内で人を取り合ってもしょうがないと考えています。今は皆でブロックチェーン業界を大きくしていく必要があると思っています。

そういった意味で、web系の強いエンジニア等は十分活躍できると思います。また、採用の際はマインドも重視しています。

また、組織内のカルチャーの1つとして透明性を非常に重視していますが、ハードルが高いことの裏返しでもあるのかなとは感じています。
  

  
入社前に持っておいてほしいスキルレベルの目安はありますか?
  

エンジニアだと理論系、入社前にマスタリングビットコインをはじめ、書籍を深く理解すればわかる課題を10問ほど出しています。これをもとに足切りしていくというよりは、わからないところをフォローするとか、理解の基盤を固めていく目的で行っています。

社内では、毎日勉強会を1時間していますので、入社してから最新技術を学ぶ環境も十分用意されています。すごい勉強になるのでブロックチェーンに興味ある人は、みんな入社してほしい(笑)
  

今後の展開について

最後に、ブロックチェーンを導入したいと考えるユーザー企業様に向けてコメントがあればお願いします。
  

まずブロックチェーンを語る時は、パブリックチェーンとコンソーシアムチェーンは分けて考えてほしいです。なぜなら、それぞれ目指す姿は異なるものだからです。

また、エンタープライズ領域において、1社でやっても意味がないため、最初の検討時から複数社を念頭に行うべきだと考えています。その場合、事前にどれだけの効果が期待されるかなどの計画の難易度は跳ね上がり、いつまでも机上の議論になりがちです。そのため、不完全でもいいので、実証実験でモノを作り上げたうえで、どういった形で業務フローが変わりうるかなどの議論を進めてもらいたいと思っています。

  
ありがとうございました。
  

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