事前知識:そもそもBaaSってなに?
本サイトのメインテーマであるBaaS(バース)について、事前にある程度理解したい方は、下記の記事を参考にしてください。
▼参考記事
サクッと学ぶ「BaaS(Blockchain as a Service)」とは何か?
BaaS(バース / Blockchain as a Service)
BaaSの定義は、使う側によってさまざまですが、本サイトではブロックチェーン(アプリ)開発を容易にするためのクラウドで提供されるサービス をBaaSと呼んでいます。
結論
AWS,Azure,IBMを比較して何を選べばいいのか、結論から書かせて頂きます。 これらは、あくまで私的見解になりますのでご了承ください。また、細かいユースケースによっても選ぶ基準は変化します。自社のプロジェクトに対し、どのBaaSを選べばよいのか、弊社でも相談を受け付けていますので、お気軽にお問合せください。
▼お問い合わせ
https://consulting.digglue.com/
AWSを選ぶ場合
最小構成の単価やパフォーマンスでしたらAWSが良いでしょう。なので下記のような場合はAWSがオススメです。
- 小規模なプロジェクト
- 個人で色々試してみたい方
- AWSに慣れている方
Azureを選ぶ場合
中規模の構成以上になると、パフォーマンスに対してコスパが良いのがAzureです。また、一部機能についても先行している印象があります。ですので、下記のような場合はAzureをオススメします。
- ある程度以上スケールしてパフォーマンスを出したい方
- サービスを見据えたプロジェクトを行いたい方
- Quorumを使ってみたい方
- Azureに慣れている方
IBMを選ぶ場合
Hyperledger FabricはIBMが主導しているプロジェクトです。IBM Blockchain PlatformはHyperledger Fabricに特化して対応しています。ですので、下記の場合はIBMをオススメします。
- Hyperledger Fabricを使いたい方
- IBMのコンサルティングを受けたい方
- Food TrustのようにIBMが絡んでいるコンソーシアムに興味がある方
【重要】
従来、Azure上で提供されてきたマネージドBaaS(Blockchain as a Service)の「Azure Blockchain Service」ですが、2021年9月10日を以って提供終了となります(2021年5月10日以降は新規メンバーの作成やデプロイはサポート対象外となりました)。
移行先の選択肢については公式ドキュメントで案内されており、2021年5月現在、開発フェーズに応じて下記が提示されています。
【運用またはパイロット段階のプロジェクト】
・Consensysの提供するマネージドBaaS「Quorum Blockchain Service」
・Azure IaaS VM(ブロックチェーンリソース管理テンプレートが用意されている)
【新規または評価フェーズのプロジェクト】
・Azure Marketplaceで提供されているQuorumテンプレートまたはBesuテンプレート
参考:Azure Blockchain Service を移行する
提供会社と主なサービス一覧
これからご紹介する世界最大のテックカンパニー達は、それぞれBaaSに特化した部門を持ち、開発と普及に力を入れて頻繁にアップデートを繰り返しています。日が経つにつれ、使いやすい機能がバンバン追加され、ブロックチェーン開発の敷居は低くなっています。
現時点ではMicrosoft、Amazon、IBMがBIG3とも呼べる存在として君臨しており、各社ともマネージドサービスを提供しています。もちろんBIG3以外でも提供している会社は数多くあります。
本記事では、このBaaSを提供している会社がどこで、どんなサービスがあるのかまとめてみました。 今後ブロックチェーンでサービス展開を考えている方がいれば、是非とも参考にしてください。
BaaS を提供する最大手 3社 BIG 3
会社 | 主なサービス |
Microsoft | Azure Blockchain Service Azure Blockchain Workbench |
Amazon | Amazon Managed Blockchain AWS Blockchain Template |
IBM | IBM Blockchain Platform |
その他のBaaS提供の会社
Microsoft
Microsoft社は2015年ころからBaaSの開発に乗り出しており、他社と比べて機能の豊富さ、他のモジュールとの連携などでアドバンテージを持っています。
最近では、2019年5月にBuild 2019にてAzure Blockchain Serviceが発表されました。Visual StudioなどにもAzure Blockchain Development Kitなどの拡張機能を提供しており、Azureでの開発環境はかなり整っていると言えるでしょう。
これらを含めたMicrosoftのブロックチェーンの取り組みは、下記の記事でご紹介しています。
▼詳細はこちら
マイクロソフトのブロックチェーン取り組み徹底解説
Azure Blockchain Service
最近発表されたAzure Blockchain Serviceは、今Microsoftのブロックチェーンプロジェクトの中でも最も力を入れているプロジェクトの一つです。
フルマネージドであるAzure Blockchain Serviceは、既存のEthereumと同じように開発できるよう、 Quorum (Ethereum) 台帳がサポートされています。
また、 Visual Studio Codeの拡張機能 (Azure Blockchain Development Kit for Ethereum) を使えば、VS Code上でデプロイやデバックを行うこともできます。
特徴
- 現時点でサポートしている台帳: Quorum (Ethereum)
- フルマネージド
- Visual Studio Codeでデプロイやデバックが可能
- コンソーシアム管理機能
- Truffleなどの 使い慣れたツールが利用可能
公式リンク
参考スライド
▼de:code 2019セッションでのAzure Blockchain Serviceに関するスライド
de:code 2019 CD09 【Build 2019 発表】Blockchain as a Service 最新情報と新サービスにおけるブロックチェーン アプリ開発手法 from Kazumi Hirose
参考記事
de:code 2019 セッションレポート➁ – 【Build 2019 発表】Blockchain as a Service 最新情報と新サービスにおけるブロックチェーン アプリ開発手法
Azure Blockchain Workbench
Azure Blockchain Serviceの登場以前では、Ethereum on Azureと並んでAzure Blockchain Workbenchが主力の一つとなっていました。詳細に関しては、下記のリンクにて解説していますので、参考にしてください。
参考記事
Microsoftのブロックチェーンクラウドサービス「Azure Blockchain Workbench」と利用例
初心者のための Azure Blockchain Workbench 初期導入方法を丁寧に解説!
特徴
- サポートしている台帳:Etherum PoA、Hyperledger Fabric
- Azure Active Directoryの利用
- Key Vaultで秘密鍵の管理
- Swagger準拠のREST APIが作成されるので、好みの言語やフレームワークが利用可能
- オンチェーンとオフチェーン(SQL)との同期
公式リンク
HP | https://azure.microsoft.com/ja-jp/features/blockchain-workbench/ |
docs | https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/blockchain/workbench/ |
Azure Blockchain Development Kit
Visual Studio 上で、デプロイやデバッグなどができる拡張ツール「Azure Blockchain Development Kit for Ethereum」などが開発にはめちゃくちゃ便利です。
公式リンク
参考動画:Block Talk
Microsoft Azure Marketplace
上記に挙げたもの以外にも、マーケットプレイスにてパートナー企業が開発する様々なサービスが利用できます。Ethereum(Quorum)やHyperledger Fabricではなく、Wavesを使って開発したい、もしくはLightning Networkを使いたい、という方がいれば、以下で検索してみるといいでしょう。
▼Azure Market Place
https://azuremarketplace.microsoft.com/ja-jp/
Azure Blockchain Service アップデート情報
MicrosoftのBaaSはかなり頻繁にアップデートされており、執筆当初(2019/7)以降、いくつかのアップデートがありました。そのうち、本サイトで紹介した記事のリンクを下記に貼っておきます。もしよろしければご参照ください。
▼詳細情報
「Azure Blockchain Tokens」Token Taxonomy Framework準拠のトークン発行・管理機能とは?
Corda Enterprise対応!Azure Blockchain Serviceのアップデート概要|2019年10月版
IBM
IBM Blockchain Platform
IBMはHyperledger Fabricを主導する企業として企業が利用するためのコンソーシアムに注力しています。その中でもHyperleger Fabricのコンソーシアム形成に対して簡単に構築を行えるBaaSを提供しています
特徴
- サポートしている台帳:Hyperledger Fabric (v1.4.1)
- IBM Cloud環境だけでなく、オンプレミスや、AWSなどのサードパーティ環境にもデプロイ可能
- Node.js、Golang、Javaで作成されたスマート・コントラクトをサポート
- Visual Studio Code の拡張機能(IBM Blockchain Platform Extension for VS Code)
- Kubernetes を利用
- Hyperledger Composerを統合
- フルマネージド
公式リンク
IBM Food Trust
ウォルマートやネスレをはじめ、世界の大手企業と一緒に食品トレーサビリティ用のブロックチェーンIBM Food Trustの提供も行っています。
特徴
- 食品トレーサビリティに特化
- 農場から店舗までの見通し、複数原料の表示、各段階での必須の詳細などの追跡機能や鮮度や産地の管理
- 規模に応じた個別のプラン
公式リンク
HP | https://www.ibm.com/jp-ja/blockchain/solutions/food-trust |
詳細資料PDF | https://www.ibm.com/downloads/cas/KJ9V69P7 |
価格 | https://www.ibm.com/jp-ja/marketplace/food-trust/purchase#product-header-top |
TradeLens
海運大手マースクらと共同で行っているTrade Lensという貿易にブロックチェーンを転用したサービスがあります。これらについても既に実運用に乗っている事例で、下記にて詳しくご紹介しています。
▼詳細はこちら
【事例】「TradeLens」貿易×ブロックチェーン
Amazon
AWSに力を入れているAmazonですが、近年ブロックチェーンも力を入れています。Microsoftよりも後発ではありますが、すでにAWSを導入している企業には既存のサービスとの兼ね合いでこちらを利用するケースも多いそうです。
Amazon Managed Blockchain
最近発表されたフルマネージドのAmazon Managed Blockchain。現在はHyperledger Fabricに対応しており、近日中にEthereumにも対応するそうです。
特徴
- 対応している台帳:Hyperledger Fabric(1.2 or 1.4.1)、Ethereum(予定)
- フルマネージド
- AWS Key Management Service を利用
- Amazon Quantum Ledger Database(QLDB)に一部データを保存することで分析などが可能
- AWSなので、日本人による解説や体験記事が比較的簡単に見つかる
公式リンク
HP | https://aws.amazon.com/jp/managed-blockchain/ |
docs (英語) | https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/managed-blockchain/ |
価格 | https://aws.amazon.com/jp/managed-blockchain/pricing/ |
参考スライド
Deep dive on Amazon Managed Blockchain from Amazon Web Services
参考動画
以下はAmazon Managed Blockchain を使用してアプリケーションを構築するための参考動画です。
AWS Blockchain Templates
Amazon Managed Blockchainが登場する以前は、こちらがAWSブロックチェーンの主力でした。
特徴
- 対応している台帳: Hyperledger Fabric、Ethereum
- 米国のリージョンのみ
- Docker コンテナを使用
- Hyperledger Fabricの場合は、 PostgreSQL を利用
公式リンク
HP | https://aws.amazon.com/jp/blockchain/templates/ |
docs | https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/blockchain-templates/latest/developerguide/what-are-blockchain-templates.html |
AWS Marketplace
AWSの場合も、Azureと同様マーケットプレイスがあります。下記のリンクから、「blockchain」というワードで検索すると表示されますので、参考にしてください。
▼AWS Marketplace
https://aws.amazon.com/marketplace
その他(Alibaba, Tencent, Kaleido)
上記の3社以外についても、本サイトでいくつかご紹介しているBaaSがあります。もしよろしければ、下記をご参照ください。
▼詳細はこちら
「Kaleido」企業向けイーサリアム開発のフルスタックBaaSとは?
Alibabaはブロックチェーン領域でどんな取り組みをしているのか
テンセント(Tencent)はブロックチェーン領域においてどんな取り組みをしているのか
最後に
ブロックチェーンの波は何年後になるかはわかりませんが、必ず来ると言われています。その波に備えて、今から色々と知識や準備をしておくことは将来の役に立つでしょう。
その中で、ブロックチェーンベースのアプリケーションやサービスを作ろうした場合、BaaSの利用は大きな助けとなるはずです。今後もアップデートを繰り返し、使い勝手がよくなっていくでしょう。